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期待の「ASEAN」美容・健康市場

【美と健康の仕掛け人に聞く】
(株)野村総合研究所 消費サービス・ヘルスケアコンサルティング部 高藤 直子氏
 ここ数年、ASEAN美容・健康市場への注目は、加速度的に高まっている。今年9月に開催されたダイエット&ビューティーフェアの海外進出セミナーの講師を務めた高藤直子氏に、ASEAN主要6カ国の美容・健康市場や日本製品への関心などについて話を聞いた。


ASEANの美容・健康市場とは?
 ASEAN主要6カ国(マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム)の2012年の美容・健康市場(一般医薬品、化粧品、日用品)は、ユーロモニターによると2兆3,800億円とされます。日本の化粧品市場が約2兆円、一般用医薬品市場が8,000億円程ですので、これらの合計と同じくらいの規模感になります。
 市場は、過去5年で年間平均8.9%ずつ成長し1.5倍に拡大しました。特にインドネシアとベトナムは年間平均成長率が13.7%、17.9%という驚異的なスピードです。今後5年間を見ると、主要6ヶ国の市場は毎年約10%ずつ成長する見込みで、この急速な内需の拡大を受けて、製造拠点としてのASEANから、消費市場として中国に次ぐ、魅力的な新興市場となっています。
各国の市場の特徴は?
 ASEANは一つの経済圏ではありますが、各国の経済発展に差があり、多様な人種や文化で構成されたモザイク市場です。国毎に、現在どのステージにいて、今後はどう成長していくか、市場が変化していくか予測して事業展開をする必要があります。
 私たちは、そのステージが経済発展に応じて3段階あると考えています。
 第1ステージは、インドネシア、ベトナム、フィリピンといった、一人あたりGDPが4,000ドル未満の国が該当します。これらの国では、美容・健康商材への消費額が年間50ドル以下で、主にシャンプーなどの日常必需品が消費されます。
 一人当たりGDPが4,000ドルを超えてくると、より高いものに手が届くようになり、第2ステージに入ると考えます。タイ、マレーシア、中国といった国が該当しますが、これらの国では、スキンケア化粧品や、サプリメント、ビタミン剤といった付加価値が高い商材への消費意欲が旺盛です。この4,000ドルが一つの目安になると思います。
 それから先は、美容先進国とされる韓国や、成熟市場になりつつあるシンガポールなど、安くても品質の高い商品が流通する第3ステージと分析しています。
 ASEAN6ヶ国の中で、市場の魅力度の高い国は、個人的にはタイと考えています。ASEANの約3割を占める市場規模を持ち、今後の成長も期待できます。次いで注視しているのは、まだ市場は小さいですが、約2億人の人口を抱えるインドネシアです。展開を検討する企業も多い国です。
日本製品の評価は?
 ASEANに進出している主要な日本企業はライオン、花王、マンダム、資生堂、ロート製薬などですが、各社とも欧米のグローバル企業と比べると、まだ存在感は小さいようです。世界各国の企業がASEAN市場を狙っていますから、競争も激しく、一部の国では韓国企業がシェアを伸ばしています。
 ただ、日本製品の人気は高まっており、ドラッグストアでの取り扱いは、ここ数年増加しています。ASEAN諸国で店舗展開をしているドラッグストアチェーン「ワトソンズ」では日本製品の品揃えを増やすために、日本人バイヤーを雇用したほどと聞いています。弊社の消費者アンケートの結果でも、日本製品への評価は高く注目されています。
 最終的に市場に普及するためには、製品特性や企業の理念、方針を理解してくれる現地のパートナー企業の存在が不可欠です。このパートナーの選定もポイントと言えるでしょう。
ビューティサービスの展開は?
 美容サービス業では、資生堂が、2004年にタイに直営サロンをオープンしました。これは、ヘアカット中心のいわゆる美容室で、立地的には高級ショッピグモール内にあり、サロン内で自社商品も販売しています。
 
 ここ数年でASEANにおける知名度が上がってきている肌研(ハダラボ)を販売するロート製薬は、2013年1月、同じくタイでスパ・エステ事業に参入しました。同国で4店舗のサロンを展開していた日系企業と合弁会社を設立し、事業を開始しました。今後のASEAN美容・健康市場は、サービス業にもビジネスチャンスがあると期待しています。
高藤直子(たかとうなおこ)氏
(株)野村総合研究所 消費サービス・ヘルスケアコンサルティング部主任コンサルタント。専門はヘルスケア業界全般、業務改革実行支援など、アジア事業展開サポートの実績多数。

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