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「極楽湯」、地域密着で年40万人集客

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周辺住民のライフスタイルに寄り添う

極楽湯 上尾店(埼玉県上尾市)

 極楽湯上尾店は商圏(半径10km)に競合7 軒がひしめき合う激戦区にあるが、月間利用者数は30,000人を超える。競争が激化し経営環境が厳しくなるなかで、業界一位の売上と安定した伸びを続ける同社にそのポイントを取材した。


地域最安値を目指す極楽湯
 上尾店は2009 年8 月にオープン。小中学校に囲まれた住宅地に立地。平屋の449 坪で極楽湯のなかでも小さい部類になる。
 利用者の内訳は、日中は常連のシニア層、夜間は会社帰りの30 代~40代が占め、土日はファミリー層でごった返す。月間の利用者は約30,000人を超え、年間では40 万人に達する。入館料金は、平日730 円で会員(入会料100 円)は680 円。回数券利用客が多く、全体の3 割を超える。定価は6,200 円(10枚綴り)だが、特売日にはさらに値引きして販売。地域住民や常連客ですぐに売り切れる。
 現在、会員数は約39,000 人。会員はレストラン料金が割引されるなど特典がつく。極楽湯は地域最安値の温泉を掲げ地域に密着した運営を行っている。
風呂目的以外の客も獲得
 入館は年齢制限がなく幼児を連れた家族も多い。「わざわざ遠方からもお越しいただいている」と同館の友金氏は話す。週末には紙風船や段ボール工作などファミリーイベントを開催。毎週楽しみにされており顔馴染みとなった家族もいる。
 また、エントランスには生鮮野菜が所せましと並ぶ。「メイクを落とした後は外出したくない」という主婦心理に応え、館内で買い物を済ませられるようにと始めた取り組みだという。予想以上に好評で、店舗によっては加工食品や菓子類、八百屋並みの青果を揃えている。
 レストランは直営で、地域住民に居酒屋代わりに利用されるなど好調。極楽湯全店の中でも売上が突出している。今年の9 月からは、ついに「食事目的の客の入館料金を無料」(2 時間制限)にした。これまでも食事目的の来館はあったが「入館無料にして明確に食事目的客を集客するのは業界初」と友金氏は説明する。スタートしてからは、女子会や学校の父兄の懇親会などにも利用されるようになった。「風呂に来なかった客層を呼ぶことができた」という。食事入館者数は、まだ少ないが、利用者の反応は良い。食事入館者の平均単価は、全体平均よりも高いことも判明した。「風呂だけでなく、レストランや生鮮品売り場など利用者にとって魅力のある施設を目指す」(同氏)は話す。温泉、食、買い物、ファミリーイベントなどあらゆるニーズにに応える。
日帰り温泉の背景
 現在、極楽湯の売上は業界一位。13年前に温浴施設のフランチャイズ(FC)からスタートし、現在、北海道から九州までのエリアで直営21 店舗、FC16店舗を展開している。
 日帰り温泉施設は90 年代後半から、「スーパー銭湯」や「日帰り温泉」チェーンが都市部近郊に出現した。増加の背景には、利回りの良いビジネス(当時は売上の約30%が利益と言われた)だったことや、大深度まで掘れるようになった掘削技術の進歩が挙げられる。
 日帰り温泉施設は全国で7,717 施設(平成24 年3 月末環境省調べ、温泉利用の公衆浴場数)あり20 年前比で倍増となる。ただ最近は、「低価格競争による利益構造の変化」や「どこの温泉も似ているので飽きられた」など言われ「温泉だけでは客は呼べなくなった」と危惧する声もある。一方で付加価値や施設、価格、サービス面などで差別化を図る施設が増え実際に、「岩盤浴で女性客獲得」、「男女で夜景を楽しめるサウナ」、「家族で楽しめる釣り堀」など企画力で利用者数を伸ばす店舗が出始めている。

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