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海外展開は開発も 流通も新たな視点で

㈱アイスタイル シニアバイスプレジデント 遠藤 宗氏

11月14日コスモプロフ アジアでの日本市場セミナー(D&B企画)で、アイスタイルの遠藤宗氏が講演した。テーマは、アジアで人気の日本のビューティ(J-Beauty)の魅力について。講演内容の一部を取材形式で紹介する。

日本の化粧品の人気の訳は?

4 つの要因が重なった結果と考えています。
それは、①安全性の高さ、②機能性の高さ、そして、③アジア圏の人々のバイングパワーの向上。最後に、④オンライン上のクチコミです。
まずは①「安全性の高さ」は、厳密な品質管理に基づいています。自己中心的ではなく「和」を大切に考える勤勉な労働者が、どこよりもきれいな水と最先端の製造設備で製造します。次の②「機能性の高さ」の元となっているのは、競争の激しさでしょう。日本の一人当り化粧品消費は世界でも圧倒的に高い額です。それだけ化粧品に対する意識が高い女性で溢れているからです。@cosmeに登録されているブランド数は33,000 ブランドで、それはほぼ日本で流通している数と言っていいでしょう。製造販売業者数は2017 年で3,688 あります。化粧意識の高い女性に対して、たくさんのブランドが様々な形で提案しつづけているマーケットなのです。だからこそ、より効果実感を得やすいとか、使いやすいとか、それぞれの独自価値を打ち出せる商品開発が必要で切磋琢磨しています。
また化粧品小売流通がアジア各国のように数企業による寡占状態ではなく、百貨店、ドラッグストア、スーパーマーケット、化粧品専門店、バラエティストアと多様なチャネルに沢山の企業が存在しています。メーカー側にも数多くのチャンスがあるとも言えます。企業は、多様な消費者のニーズに応えようとする柔軟性を持っています。もともと日本ではお客様のためにどうするかという風土はありますが、化粧品においては@cosmeのようなクチコミサイトができ、その流れはより顕著になりました。「この商品のこういうところが好き」「こういうところが使いづらい」「香りはどうかと思う」など様々なクチコミが寄せらそれを見るメーカーは改良を加えていくのです。この20 年で、美容意識の高い日本女性の細かいニーズにもっと応えようとする動きが活発になりました。季節でもニーズは変わります。そんなニーズに細かく対応すべく日本の化粧品メーカーは高機能な商品開発に邁進しています。その細かいニーズに対応する多品種少量生産ができることも日本の製造業の得意とするところです。これからのことがコストパフォーマンスの優れた製品を生んでいるのでしょう。
③「アジア圏における購買力の高まり」も間違いなく日本の化粧品人気の大きな要因でしょう。この10 年でアジア圏各国の可処分所得は増加しました。化粧品は日用品でもあり嗜好品でもありますが、嗜好品としての需要の高まりがマーケットを大きく成長させます。以前のアジアでは化粧品は日用品でした。「衛生的に清潔にする」から、「美しくなる」への変化です。顔を洗う、髪を洗うというシンプルな行為も、シャンプーやコンディショナーのようなインバスだけでなく、美しい髪でいられるアウトバストリートメントを使うようになりました。メイクをする人も10 年前より確実に増えました。こういう変化が美容先進国であった日本の商品を受け入れやすくしたのだと思うのです。
最後の要因は、④「インターネットによるクチコミ」です。アットコスメもそうですが、中国のタオバオやTmall、アマゾンも、使ってどうだったかをネットに書き込んで、それをみて買うという行動が普通になりました。各国の美容感度の高いKOL が日本の化粧品を紹介しはじめたのもそうです。インターネットの力により、日本の化粧品がアジア圏の多くの方の目に触れるようになったのは、本当に大きなことです。

海外の展開について日本の化粧品がさらに成長するには?

答えは明確で、マーケティングを海外では海外仕様に変えるということです。最近は資生堂がすごく積極的に海外でのマーケティングをされています。香港や台湾ではコーセーや花王も元気です。開発段階からアジアを見据えて開発をし、プライシングすることです。加えて、チャネルを国内と同じに考えないことだと思います。日本のように百貨店がたくさんあるわけでもないので、百貨店にこだわらずに展開をしたほうがよいでしょう。欧米ブランドはすでにそのように展開し生活者との接点をたくさん作りだしています。プロモーションももっと積極的にすべきだと思います。よく比較されるK-beauty は本当に上手に海外展開を進めています。もともと国内市場だけを見ずにブランド展開を進めている印象です。アジアでは圧倒的に日本のブランドよりも強いですね。
つまり、ここ最近の日本の化粧品の好調は何かを仕掛けたからではなく、もともとある高い商品製造力と商品企画力によるハイクオリティな商品が、アジア圏の市場の成長とインターネットの浸透という背景により、自然と広がったにすぎないのです。一部の大手メーカーは何十年も前から海外で地道に日本の化粧品を広げる努力をしてきましたが、今後は小さいメーカーも自ら仕掛けて、アジア圏を入り口に世界に広がっていくような取り組みをすることが求められるでしょう。われわれも、もっと沢山の日本の化粧品メーカーと協力して、海外で多くの方々に日本の化粧品が使われるように努力していきたいと考えています。

えんどう はじめ
㈱船井総合研究所、㈱たしろ薬品などを経て、2007年1月㈱コスメネクスト設立時より取締役に就任し、アイスタイルグループに参画。2014年7月より代表取締役社長に就任。
2015年7月㈱アイスタイル執行役員に就任、2018年7月からはシニアバイスプレジデントに就任。アイスタイルグループにおける国内外の流通事業全般を統括している。

 

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