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日本の温泉地が持つ心の 健康資源に大きな魅力が〈インタビュー〉

ドイツフライブルク大学医学部教授(専門分野 保養地医学、温泉療法)ヨハネス・ナウマン氏 (Prof.Dr.med.JohannesNaumann)

ドイツ南西部の保養都市バートクロツィンゲン(※1)(バーデン=ヴェルテンベルグ州)は、国内だけでなくスイスやフランスからも保養目的の観光客が訪れる「クアオルト(健康保養地)(※2)」。バートクロツィンゲン市VITA CLASSICAクリニック所長でありドイツフライブルク大学教授ヨハネス・ナウマン氏が今年1月来日した。同氏に日本の温泉地のへの期待を聞いた。

ドイツのクアオルトの現状について?

「クアオルト(健康保養地)」は、温泉を中心に健康増進のためのあらゆるセラピーのインフラが整っている場所です。空気がキレイで、騒音もなく、車も通りません。自然が豊富なクアパーク、催しが行われるクアハウスや宿泊施設、自前のオーケストラ。クリニックと別にリハビリ専用クリニックもあって、理学療法、サウナ、温泉(炭酸泉、ラドン泉、硫黄泉)、泥浴、海藻浴、そして、ドイツの伝統的な気候療法などのプログラムが用意されています。連邦制のドイツでは統一基準に沿って各州政府が「クアオルト(健康保養地)」を審査・認証します(※3)。温泉療法医だけでなく、理学療法士や温泉療法士といった専門の有資格者がいることが条件です。認証後も品質管理のための定期的な監査を受けています。昔は、ここでの療養・保養に保険組合や国が補助を出していましたが、医療費などの社会保障費の高騰が進み補助が減ってきているのが現状です。

クアオルトの特長は?

私は、クアオルトは運動や食事を分かっていても自分ではなかなか直せない生活習慣を根本的に変えることができると確信しています。それは、専門家の講義を聴くからでなく、健康になるメソッドを実体験して健康を実感するからです。
これまでの生活スタイルを考え直し、戻ってからも維持できるための再教育の場なのです。
現在、バーテンブルク州には56 のヘルスリゾートがあって、156 人の医師が常駐しています。そのほとんどは60 歳以上で15 年の経験を持つベテランでした。彼らへのインタビューによると、多くの客は、関節、筋肉痛、肥満の方、慢性的な痛みを抱える高齢者で、保養滞
在によって7 割以上の方は、何らかの改善の実感を持って帰っていくことが分かりました。特に慢性疾患の方には適しているのです。
ところが、いま、多くのクアオルトでは、観光やウエルネスを強化して間口を広げ、客を増やそうと取り組んでいます。最初の入口は、観光やビューティやウエルネス目的でも、過ごしてみて、健康にもこんなに良いと実感すれば、自費でもまた来てもらえるのですから。それは、背景にある医療レベルのクオリティのサービスで、保養による改善の結果を出すこと、そしてエビデンスを示すということです。

温泉療法の効果は?

温泉療法には、まだ、潜在的な大きな可能性があると考えています。特に、疾病予防や、現代医学で治らない慢性疾患、肥満やストレスといった生活習慣病分野においてです。既に、心臓循環器系の疾患や、うつや、アルツハイマーの症状において、有意に改善が見られた研究結果もあります。
温泉は、浸かっているだけでも温め効果や含まれる成分の効果が期待できます。免疫システムや自律神経バランスの回復に役立ち、うつや不眠症に効果的です。炭酸泉であれば血管拡張から血流改善が認められています。
また、水の浮力は膝の負担を和らげ、抵抗は動きの速さや組み合わせで対象者の目的に合わせた筋力運動ができます。有酸素運動が、もっと速く強くすれば無酸素運動にもなります。しかも、温水は、馴染みやすく転倒の恐怖も少なく、一方で、各自が強さを調節でき、老若
男女が一緒にできるメリットがあります。水中のサイクリングやトランポリングなどは飽きないために有効です。音楽があれば、キツイ運動にも耐えられて、若い世代にも楽しい魅力的なメニューになります。

日本の温泉も、例えば、何段階かの温度の浴槽や、胸までの深さの浴槽があれば、湯中での運動など活用の幅が広がります。また温泉だけでなく、いまある資源を使って、森林浴、山歩き、和食と組み合わせて、週末コースとか、1 週間、3 週間のコースで、もう一度行きたくなる個性的なプログラムを作ってみましょう。

日本の温泉地のチャンスは?

日本は、温泉の数が多く、温度も高く、溶けている成分も非常に多彩です。海からすぐ山がある地形、豊富でキレイな水、間違いなくドイツに比べ、自然資源の種類と量に恵まれています。ドイツの療法士たちが羨やむ環境です。
今回、私は初めて日本を訪れました。公共の場所はどこも清潔で、交通機関は時間に正確で、日本人は外からの私にもフレンドリーでとても礼儀正しく接してくれました。各地の温泉や、宿や食事は、どこも個性的でした。
私は、雪景色の川の中に湧く温泉では、本当に長い時間、静かに浸かって温まっていました。日本の温泉でしか味わえない感覚。自然と一体化し心が休まるひと時でした。私は、日本には、ドイツとは一味違う温泉地の本来の姿があるように思ったのです。

※1. 1911年温泉が見つかりその後温泉保養地に。バートクロツィンゲン市の温泉は高濃度の炭酸泉で知られ、同様に炭酸泉の長湯温泉のある大分県竹田市とは姉妹都市提携している。
※2. クアオルト(Kurort)はドイツ語で「療養地」のこと。ドイツ語のクア(Kur)「治療・両湯、保養のために滞在」と」オルト(Ort)「場所・地域」から成り立っている。
※3. 州が認定(=国が認定)した特別な地域で、4つの療養要因で医療保険が適用される地域。4つの要因とは、「土壌に由来する温泉、蒸気、泥等」、「海(海水、海風、海泥等)」、「気候(太陽、空気)」、「クナイプ式(水・運動・食事、食物・秩序療法で自然治癒力を高める)」。症状により対応する療養地が選ばれ専門医が治療する。最長3週間滞在。(参考資料 ウィキペディア他)

Prof.Dr.med.JohannesNaumann(ヨハネス・ナウマン)
ドイツフライブルク大学医学部教授/バートクロツィンゲン市VITA CLASSICAクリニック所長(専門分野 保養地医学全般、温泉療法)。7年間温泉医学の研究に取り組んでいる。1月27日来日、岡山県湯原温泉、鳥取県関金温泉、熊本県菊池温泉、大分県長湯温泉・別府温泉、鹿児島県霧島温泉などを訪れた。2月14日第85回健康と温泉フォーラム月例会で講演「グローバルサーマリズム~日独温泉共同研究の挑戦」。

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