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地域の自然・歴史・文化に 「ウエルネスビジネス」 のヒントが(日本ウエルネスウォーキング協会会長 西村 典芳氏)

〈インタビュー〉関西国際大学現代社会学部教授/日本ウエルネスウォーキング協会会長 西村 典芳氏

ウエルネスウォーキングは2013年に神戸地区を中心にスタートした。その後、参加者の増加とともに16年には日本ウエルネスウォーキング協会が設立され、全国へと広がりを見せている。ウエルネスウォーキングの魅力は、確かなエビデンスとそのコースづくりにありそうだ。同協会会長西村氏に話を聞いた。


ウエルネスウォーキングとは?

ウエルネスウォーキングは、歩行ポールを使用するノルディックウォーキングや健康ウォーキング、そして街歩きの要素も取り入れた新しいウォーキングのスタイルです。
ドイツの気候療法の手法がベースにあります。目標心拍数を設定しますが、不慣れな方には「160-年齢」の基準で歩行の速さを調整します。現在は年間2,000 人ほどが参加していて、コースは40 を超えました。
このウォーキングに興味を持って継続していただくポイントは自然の風景や地元の歴史、地理、そして文化や風習との触れ合いも考え抜かれたコースを、皆で楽しみながら歩くことです。するとその参加者の中からリーダーが生まれ次の指導者が成長して、また新たなコミュニティを作り広がっていくのです。地域の健康づくりに取り組みウォーキングの効果を示してきたことで、岩手県、奈良県、三重県、鳥取県でも事業がスタートしています。自治体の健康経営の有効な手段として定着してきたように思います。

効果検証への取り組みについては?

現在は、理化学研究所とウォーキング後に疲労がどのように回復するか検証しています。ウエルネスウォーキングプログラムは、歩行で疲労をもたらしながら、森林浴や横臥療法といった疲労回復を促す因子が混在していることが特徴的です。体に疲労が増加しても感覚的には疲労が軽減されて、次回への参加意識を高めるのに有効に働いていると考えられるのです。
また、昨年2 月には、神戸港にある「神戸みなと温泉 蓮」という温泉利用型の健康増進施設で、1 泊2 日の健康増進プログラムの効果検証を行いました。温泉を活用し、ウエルネスウォーキング、ヨガ、水中運動など複数のアクティビティをプログラムにしました。女性27 名を対象にプログラム参加1 週間前から、介入1週間後、6 ケ月後、1 年後と、意識感情調査(POMS)、生活調査(SF36V2)、疲労調査(チャルダー)のアンケートで追いました。介入前後では血圧減少の効果が確認できました。また、介入後1
週間と6 ケ月後で、疲労の増加と精神の日常生活機能の低下が確認され、このこことで疲労の増加と精神の日常生活機能の低下を予防できるかもしれないと考えています。
今回は提供メニューを横串してひとつのプログラムに仕立てました。食事も重要で、抗疲労に有効な栄養素を日本食に取り入れた食事を提供しました。関わった皆が連携することも大きな狙いでした。これからは、こうしたプランをパーソナルにアレンジして全体をコーディネートできるプロデューサーを育てていくことが重要だと考えています。

理想のウエルネス施設とは?

いま、ホテルスパの効果を「見える化」しようと考えています。トリートメントと休息と運動、そこにウォーキングを組み合わせたウエルネスプログラムで検証します。健康状態や疲労度が分かれば、メニューへもっと導き易くなるでしょう。利用者の目的に沿ったエビデンスのあるプログラムが整備された施設です。スパがもっと暮らしに入っていくといいと考えています。
もう一つはアメリカのウエルネスセンターのように過ごし方にずっと自由度のある施設。いろいろなアクティビティが各所もいれば、次々と積極的にアクティビティに参加する人もいるような。今日はヨガやって最後にトリートメントを受けるというようなジム感覚の楽しみがあればいい。しかし、ただ居心地がいいだけでなく、もっとアカデミックに自分と向き合い、自身のライフプランを考える気づきがある場。そこで提供するウエルネス分野の様々なワークショップの人材を育てたいと考えています。
私は、これからの時代は、仕事、家庭に加え、もうひとつの第三のコミュニティをどう創るかが、人生の重要なテーマになると考えています。ウエルネスツーリズムをはじめとして、その期待に応えるサービスは近い将来に大きな産業に成長するでしょう。そして、ウエルネスウォーキングで明らかなように、健康効果だけに着目するのではなく、地域の資源としての自然や歴史や文化、食も含めてプランを組み立てることで魅力も増し、きっとビジネスとしての可能性も広がると思います。

にしむら のりよし
関西国際大学(旧名神戸山手大学)現代社会学部教授、日本ウエルネスウォーキング協会会長、日本ウエルネス学会理事。大手学習塾入社後27歳のとき社内起業した旅行会社で教育機関向けに合宿教育を提供する。その後森林セラピーやヘルスツーリズムに関心を持つ。2012年から現職。

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