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「新しい生活様式」の中の 課題をチャンスに(経済産業省 ヘルスケア産業課長 稲邑 拓馬氏)

〈インタビュー〉経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課長 稲邑 拓馬氏

with コロナafter コロナの時代に、新しい生活様式に応える健康・美容サービスの創出が期待されている。これまで国が取り組んできたヘルスケア産業に向けた施策は、既
存産業の垣根を超えてどんな新産業を生み出すのか。ヘルスケア産業施策のこれからについて聞いた。


健康・美容産業の役割について?
新型コロナウイルスの感染が拡大したことで生活が一変し、様々なビジネスが変化を余儀なくされています。
テレワークの普及による肩こり・腰痛などの筋骨格系症状や、メンタルヘルスの問題や、外出機会の減少による運動不足といった新たな健康課題が生まれています。一方でオンライン会議の普及によって自分の顔を見る機会が増えたこと、日常的なマスク着用による肌荒れなど、自分自身の身体と向き合う機会が増えたことから「美容意識が高まった」という民間の調査結果もあります。このように新たな健康課題やニーズに応えるヘルスケアサービスが今後も生まれていくのではないでしょうか。
新産業創出への取り組みについて
経済産業省では、医療保険や介護保険といった公的保険サービスの周辺にある、健康の維持・増進に資するヘルスケア産業の創出・拡大に向けた取り組みを行ってきました。
ヘルスケア産業を需要と供給に分けると、新産業の創出は供給に整理できます。この供給面の取り組みとしては、利用者が安心してヘルスケアサービスを利用できるようサービスの品質を確保するため、そのサービスを提供する業界が自主的なガイドラインを策定する際の指針として「ヘルスケアサービスガイドライン等のあり方」を取りまとめています。
この指針は、「透明性」や「客観性」、「継続性」の確保を骨格とし、ガイドラインが業界内で広く横断的に使用されるよう、策定にあたってはサービスを提供する事業者、医療・介護等の専門家、利用者、さらにサービス事業者と利用者と「新しい生活様式」の中の課題をチャンスにの間でサービスを仲介する方など、色々な立場からの広い意見の反映を求めています。
また、地域のニーズを踏まえたヘルスケア産業の創出を後押しするため、自治体や地域の医療・介護関係者、民間企業が連携する「地域版次世代ヘルスケア産業協議会」(以下、「地域版協議会」)の設置を促進しています。さらに、地域版協議会を対象にした「アライアンス会合」を開催しており、地域版協議会同士の課題や情報を共有し、事業者によるビジネスモデルの事例紹介や関係省庁施策の紹介等により活動支援を行っております。これらによって、地域の健康課題を解決するビジネスモデルが確立され、全国に向けて展開されることを期待しています。
「健康経営」、「女性の健康」ついては?
ヘルスケア産業の需要面での施策として、健康経営の推進に取り組んでいます。「健康経営」は従業員が健康的に働ける環境づくりを企業が進めることで、従業員の活力や生産性向上につなげ組織のいった健康経営に取り組む企業を表彰する制度として、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人認定制度」を推進しており、その認定企業数も着実に増加しています。引き続き企業が社会的に評価される環境づくりを進めていき、新たなヘルスケアサービスの需要喚起にげていきます。
また、企業が進める「健康経営」の主な施策には生活習慣病予防やワークライフバランスの推進、ヘルスリテラシーの向上などがありますが、「女性の健康」にも着目しています。女性の健康保持・増進に向け、婦人科健診・検診の受診促進や女性特有の健康課題に関するセミナーの開催、各種休暇を取得しやすい環境づくりに向けた企業の取り組み等を評価しています。
今後は、企業が従業員の健康に投資することが当たり前となり、それが社会から評価される方向に価値観を変えていくことが重要と考えています。「健康経営」が様々なステークホルダーから評価される環境づくりを進め、投資を拡大させたいと考えております。この変化によって、健康の維持・増進に繋がるヘルスケアサービスの利用もさらに促進されるのではないでしょうか。
2021年の新たな取り組みについては?
新型コロナウイルスの感染が終息するまでは、感染拡大防止策を徹底し、利用者が安心してサービスを受けることができ、またサービスに従事する人が安心して働ける環境を整備することが大切と考えています。昨年はエステティックやリラクゼーション、フィットネスなどの各業界において「感染拡大予防ガイドライン」が策定されましたが、新たな知見や対策を盛り込む際には、引き続き支援していきたいと考えています。
新型コロナウイルスの影響により、医療や介護等の現場で必要とされる感染拡大予防策や、運動不足や受診控えによる健康二次被害という早急に解決が必要な課題も生じています。新たな課題に応えるサービスの創出に向けて、引き続き取り組んで参ります。

いなむら たくま
1998年通商産業省(現経済産業省)入省。2015年経済産業省資源エネルギー庁長官官房総合政策課需給政策室長、2016年外務省経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部参事官、2019年経済産業省資源エネルギー庁長官官房エネルギー制度改革推進総合調整官、2020年5月より現職。

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