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環境にやさしいパッケージに対する消費者の視点:インドの状況(MINTELグローバルトレンドレポート28)

インドの消費者の約4分の3(75%)が環境保護の重要性を認識しているものの、その認識は必ずしも行動に反映されていません。ミンテルの調査によれば、ごみを常にリサイクルに出したり、サステナビリティを表示した製品を購入したりする消費者はわずか15%です。

サステナビリティに対する考え方と実際の行動の格差には、利便性や信頼性の不足、価格、購入のしやすさなど複数の原因があります。

環境にやさしいパッケージは、食品や飲料を購入する際に消費者が考慮する点の1つですが、ミンテルの調査は、消費者が利便性や価格を優先することを示しています。ブランドにとっては、経済性、利便性、魅力的な機能を強調しつつ、環境にやさしいパッケージを付加的なメリットとして宣伝することが重要です。インドの消費者は食品や飲料を購入する際、健康上の利点や天然素材の使用を最も重視し、環境への配慮は二の次です。

サステナビリティを表示した製品への全般的な関心の低さは、購買客が味、健康上の利点、ブランド名を重視するという現実を反映しています。それでも消費者の3分の1は、環境にやさしいパッケージの食品により高い価格を支払うと回答しています。これは、環境意識の高い消費者は、環境にやさしいパッケージの製品に投資する意志があるということです。このような環境意識の高い消費者は18~34歳の女性、特にフルタイムで働く女性に多く見られます。

インドの消費者にとって具体的に環境にやさしいパッケージとは?

ブランドが環境への配慮について語るとき、大抵はパッケージのリサイクル性を挙げます。ミンテルの世界新商品データベース(GNPD)のデータによれば、過去5年間で環境にやさしいパッケージと表示したインドの食品や飲料は60%増加しました。その90%以上はリサイクル可能なパッケージです。

しかし、リサイクルのインフラやリサイクルに出す方法についての明確な表示がなければ、消費者はサステナブルなパッケージに魅力を感じません。ミンテルの調査では、インドの消費者の36%が非プラスチックのパッケージを最も環境にやさしいと考えており、リサイクル可能なパッケージ(27%)やプラスチック使用量の少ないプラスチック(28%)を上回ります。これはメディアが常にプラスチックを悪者扱いしているせいでもあります。

それでも食品の日持ちを良くし、食品廃棄物を減らす本質的な機能により、プラスチックのパッケージがなくなることはありません。今後、パッケージ業界はプラスチックのサステナブル度合いとリサイクル性を高めることに注力すると予想されます。

ミンテルは、プラスチックの「責任ある」使用のほうが現実的で経済的だと考えます。売り手はパッケージを減らし、環境へのやさしさを高めた責任あるパッケージにより、顧客の懸念に対応することができます。

ミンテルのグローバルパッケージングディレクターであるDavid Luttenbergerも、プラスチックであるというだけでパッケージを軽視すべきではないと強調し、次のように述べています。「消費者はブランドにプラスチック使用の削減や廃止を期待する一方、使用する場合は、なぜその状況、地域、時間にプラスチックが適切な素材/形式なのかの説明を求めます。」Luttenbergerは、使い捨てプラスチックの完全な撲滅は非現実的であり、プラスチックに責任を持つことのほうが実用的、経済的で、最終的には実現の可能性が高い(全世界がそうならないにしても)とも考えています。

インド初のプラスチッククレジットプラットフォームであるThe Disposal Companyなどの企業は、ブランドや消費者の気候変動対策を合理化しようとしています。インドの一部のブランドはパッケージに、The Disposal Companyのニュートラルロゴを表示し、使用したプラスチックの責任ある回収とリサイクルを支持し始めました。プラスチック不使用の取り組みとして、紙などの代替素材に移行したブランドもあります。

責任を持つ:チョコレートバーの出荷にポリスチレン(Thermocol)の使用が必要な理由を説明するWhole Truthのパッケージ

プラスチック使用の最小化を重視

使い捨ての文化は大量のエネルギーと天然資源を無駄にするだけでなく、深刻な環境破壊を引き起こします。消費者はパッケージに利便性を求めるため、汎用的な特性を持つプラスチックが使用されることも少なくありません。しかし現代の消費者は「過剰包装」を嫌い、ブランドに削減を強く求めています。サーキュラーエコノミーのモデルにプラスチックパッケージを組み込むなど、責任を持ってプラスチックを使用するブランドが、消費者の支持を得ることになるでしょう。

サーキュラーエコノミーは再生可能エネルギーへの移行に支えられています。また、以下の3つの理念に基づきます。
• 廃棄と公害の回避
• 製品と材料の使用
• 自然の再生

サーキュラーエコノミーのモデルは、プラスチックなど特定の材料を「禁止」あるいは何かに「置換」することではありません。むしろ廃棄を避け、資源の利用を最適化し、環境に有害な活動を避けることが重要です。

ブランドにはまず、責任を持ってプラスチックを使用しているかどうか自社パッケージの評価をおすすめします。長年使用してきたトレー、オーバーキャップなどの廃止、デザイン変更による軽量化が必要かもしれません。パッケージによる廃棄物公害の危機に対処するには、パッケージの削減がはるかに有効です。また、ブランドと消費者を現在の「取る、作る、捨てる」の直線モデルからサーキュラーモデルに転換することが重要です。

ブランドはパッケージに対する消費者の期待を理解し、消費者の共感を得られるサステナブルな機能を採用する必要があります。材料の種類に関係なく、パッケージの削減は環境への影響を少なくすることに役立ちます。

消費者への啓発:材料の種類に関係なく、パッケージ材料の削減は環境への影響を抑えます。ケロッグは、これまで採用してきた「紙箱パッケージの中に袋が入っている」製品から「ドイパック」と呼ばれるサステナブルな包装の製品への移行で、カーボンフットプリントを80%削減したとしています。
出典:WorldStarグローバルパッケージアワード

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