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SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」から庄内のファンづくりを(ヤマガタデザイン㈱ 代表取締役 山中 大介氏)

山形県鶴岡市では、2001年の慶応義塾大学先端生命科学研究所の招致から、鶴岡サイエンスパークの壮大な開発計画が進んでいた。その一角に地元の期待を担って宿泊施設「SUIDEN TERRASSE」が2018年9月開業した。同ホテルの運営など8事業に取り組むヤマガタデザイン㈱代表取締役山中大介氏に、現在までの取り組みを聞いた。

Iターンも地域も喜ぶ街づくりを

社会人になって商業施設開発のデベロッパーをやっていましたが、2013 年に鶴岡サイエンスパークを訪れたことがきっかけで移住を決めました。その頃、サイエンスパークのエリアは行政主導の開発が一区切りついたところで、その後の民間主導での展開が求められていました。そこで、前職で街づくりをやってきた私が引き受けることになったのです。目指すのは、I ターンの人も地域も喜ぶ街づくりです。現在の施設管理の部門長と二人で資金調達をして用地開発をスタートしました。そこで考えたのは、地域外からの人を迎える機能が必要だということ、そして何よりサイエンスパークの存在自体が地域に受け入れられることが重要ということでした。その結果、行きついた事業が、大人の交流施設としての「SUIDEN TERRASSE」と子どもの交流施設としての「KID DOME SORAI(キッズドームソライ)」でした。ホテルにはレストラン、スパ、ジム、会議室を備え地元からも愛着を持ってもらおうと考えました。一方、荻生徂徠の名が由来の SORAI は、子どもたちの創造力や運動能力を思いきり発揮できる全天候ドーム型の遊戯施設です。子供たちの将来の選択肢が増えることに役立てたいと考えました。それに、Iターンでも地元出身でも子育ては共通のテーマですから。
現在、観光、農業、人材、教育分野で 8 つの事業を展開していますが、スイデンテラスが様々な事業の入り口になっているように感じます。人材事業の一環である「ショウナイズカン」というWEB メディアでは仕事や暮らし情報を発信しています。農業事業の「SHONAI ROOTS」では、化学肥料や農薬に頼らない環境負荷の低い農法でハウスでベビーリーフやミニトマトの栽培に取り組むほか、商社として地域内の農作物の外販にも取り組んでいる。

「SUIDEN TERRASSE」に込めた想い

欧米の魅力ある先進事例を見つけていち早く持ってくることは、これまでの日本がやり続けてきたことですが、本来、日本にはウォークマンを作ったようにすごくイノベーティブな文化があって自分達で生み出してプラットフォーマーにもなれるはずです。何かを真似るとか、参考にするとか、気づきをもらうことはあったとしても、あくまで庄内という場所にフォーカスして、ここにオリジナルを創ることが大切だと思っています。

当初描いた姿から施設もサービスもどんどん進化しています。変わらないのは「SUIDEN TERRASSE」の名に込めた「晴耕雨読の時を過ごす、田んぼに浮かぶホテル」というコンセプトだけです。水田を面白がって世の中に発信し、施設をつくり、サービスを作っていくことが、庄内に人を呼ぶきっかけになると信じています。我々自身がこの風景を純粋に綺麗と感じ、好きだと思えるものをとことん信じることです。庄内には出羽三山の山岳信仰や城下町という歴史があり、豊かな精神文化や、季節ごとの海山の幸に恵まれ育まれた食文化もあります。そしてお客様には、季節や時間、天候で変わる水田の景色をとても気にいって頂いています。ワーケーション客や長期滞在客も増えて、地域の飲食店や観光にも波及効果が出てきて、街全体でお客様を迎えるムードが生まれてきました。

庄内という地域の魅力を深掘りする

我々の目標は、あくまで地域の課題解決型の事業を通して経済と人間と環境のバランスのとれた社会を創ることですから、当然、心身のウエルネスな状態とは深く関わっていくでしょう。
この春からは、滞在プログラムを提供しようと考え、少しずつ体験型ツアーを始めています。何より山形の庄内というこのロケーション自体が「癒し」ですから、そこに、この地域ならではの体験をきちんとコンテンツ化しておこうと考えています。やはりオリジナルと必然性が重要です。田んぼの収穫体験のような地域との関係づくりもよいプログラムになるでしょう。
まずは、ホテルが装置産業として機能してお客様をきちんと呼べること、その資源やサービスやプロモーションがかみ合っていることが前提です。
地域での事業は、話し合いがとても大切です。でもそれだけではイノベーションは起きません。連携することや、コミュニティを創ること自体が目的となって、一番大切な「何を成すか」が置き去りになっていることもあります。
地域は初めてのことに消極的な面があります。既成事実から、より多くの共感や地域連携が生まれるのです。地域連携とは、やりたいことを成すために最短の距離で突き進んだ結果なのだと実感しています。私たちの経験を、同じように課題を抱える地域の取り組みにも役立てていければと考えています。

やまなか だいすけ
1985年東京都生まれ。三井不動産で大型商業施設の開発と運営に携わったのち、2014年に山形県庄内地方に移住し、街づくりを担うヤマガタデザイン株式会社を設立。鶴岡サイエンスパークの開発を指揮し、2018年にはコミュニティホテル「SUIDEN TERRASSE」と子どもたちの遊戯施設「KIDS DOME SORAI」をオープンする。

「SUIDEN TERRASSE」

■所在地 〒997-0053 山形県鶴岡市北京田字下ノ巣23-1

■URL https://www.suiden-terrasse.ymagata-design.com

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