話題の人

シニアビジネスは、高齢者の理解から始まる

【話題の人】
グローリア21 代表取締役/ケアセラピスト協会副理事長 佐治(現 江端)ひとみ氏
 医療・介護の関連産業として高齢者に予防的なスキンケアを行うケアセラピストが注目されている。長年にわたり、エステティックと医療・介護との連携を模索し、累計2000名以上のケアセラピストを輩出してきた佐治ひとみ氏に話を伺った。


ケアセラピストとは?
 高齢者は、加齢によって様々な機能レベルが低下し、皮膚の乾燥や浮腫、巻き爪などを発症します。ただ、これまで医療や介護の現場では、スキンケアの知識や技術を持った人材が不足しており、充分な対処ができていませんでした。
 私は、エステティシャンとして20年以上、医師である父親と情報を共有しながら、病院に通う高齢者の肌や爪をケアしてきました。その中で予防的な効果を確認し、重症化して薬に頼る前に、施術によって健康を維持できないかと考えるようになりました。この、医師では手が届かなかった、包括的なケアのための専門知識・技術の習得した施術者がケアセラピストです。高齢者のADL(日常生活動作)やQOLの向上を目指していますが、公的医療保険の削減にも繋がります。
 また、キャリア形成に有効として全国10か所以上で雇用のセーフティネット対策訓練に採用されています。ヘルパー2級と合わせてケアセラピスト初級を取得した卒業生は1,000名を超えています。
医療・介護周辺にビジネスチャンスがあると言われますが?
 美容・健康サービスは、医療や介護との連携による新たな産業の創出が期待されていますが、実際には医師と連携していくことはハードルが高いものです。
 昨年、経済産業省の委託を受け、医療・介護周辺サービス産業創出調査事業を行いました。200名の医師の協力のもとトライアルで施術を行い、医療・介護施設でどのようなコラボレーションが可能か、ケアは予防効果があるか、産業として成り立つかなどを聞き取りました。
 結果、ヘルパーや介護福祉士といった基本的な介護技術を持つ人にケアセラピストの知識を身につけて欲しいという声が大多数でした。さらに99%の方が、予防的なケアは効果的だという心強い回答が寄せられました。
 現在、ケアセラピストの就職先は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった介護事業所です。無償サービスの段階がほとんどですが、有償では1時間3,000円ほどで提供されています。宮崎県のある地区では月間で84件施術するなど、軌道に乗り始めています。
 ケアセラピストになりたいという、エステティシャンからの問い合わせも多いですね。サロンの顧客は高齢化していますから。すでに約200人のエステティシャンが資格を取っていますが、施術者自身が高齢になってきますので、痛みや感覚、気持ちが分かることはプラスになるはずです。
 エステティシャンは技術を持ち、ホスピタリティのある接客ができます。これは介護職の方とは違った資質です。エステティシャン出身のケアセラピストが増えれば、大きな市場が生まれると希望を持っています。ただ、それには意識を変える必要があります。
意識を変えるとは?
 本気で高齢者を対象としたビジネスを展開するなら、その特性を理解することからスタートすべきです。高齢者は、視力や聴力が低下しますし、脳の流動性知能(学習や情報吸収によって従来とは異なる行動様式を身につける能力)も落ちます。この特性に合わせた、接客方法や商取引が必要です。
 また、中には認知症の方もいらっしゃいます。ご本人は納得されていても、家族の方とトラブルになるケースもあります。常に第三者とコミュニケーションを取りながら施術することも必要です。これらを学ぶ「シニア検定」も準備しています。ヘルパーの試験では、この4月から教材に特定商取引法の内容が組み込まれています。
 高齢者は3000万人を超えていますが、介護や支援を要する方は1割以下です。自立されている高齢者を対象とした美容・健康のサービス業には大きなチャンスがあると思っています。

イベント情報

PAGE TOP