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「ぽっちゃり」をポジティブ産業へ

美と健康の仕掛け人に聞く
㈱ぶんか社 編集局 第一編集部 副部長 今 晴美氏

 日本初のぽっちゃり向けファッション誌「la farfa(ラ・ファーファ)」発刊号は、現在まで三刷を教え発行累計8万部に達した。書店では今も売り切れ状態が続く。同誌編集人の今氏に話を聞いた。


発刊の経緯は?
 LLサイズ以上の服の購入は、人目を気にせず買える通販が主流でした。最近は海外ファストファッションブランドの上陸で、サイズの大きい安くて可愛い服が増えました。さらに近年、通販アパレルが手掛けるLLサイズ以上の実店舗も登場しました。ぽっちゃり体型向けの市場が徐々に形成されていて、服を選べる環境が整ってきたのです。環境が整ったのであればコーディネートするファッション誌があっても良いのかなと思ったのが発刊のきっかけです。
 前例のないコンセプトなので手探り状態からのスタートでした。社内では、本当に売れるのかずっと疑心暗鬼の眼で見られていましたが、実は私は手応えを掴んでいたのです。例えば、ぽっちゃりモデル公募の時です。誌面では3サイズと体重を公表しようと考えていましたので、不安もあったのですが、想像以上の応募で、最終的に250人も集まりました。街に出ると分かりましたが、皆さん明るくてスナップ写真を頼んでも嫌がられたことは一度もありません。発刊号の売行きは予想以上でした。
 ファッションに興味がある人は、ファッション誌を何種類か併読しているものですが、本誌の読者は普段、ファッション誌を買わなかったようです。年齢は20代後半から30代前半が中心で、併読アンケートでは、テレビ雑誌や漫画を購入している人が多いのです。今までファッションと無縁だった人にファッションを届けられたと思うと嬉しくなります。
 本誌は地域で隔りはなく全国満遍なく売れています。アパレルブランドによっては東北方面でLLサイズ以上の服が売れるとも言われ、我々も同じ予測を立てていましたが、どうやらその傾向はあてはまらないようです。
ダイエットは禁句?
 もちろん最も重要なのは心身ともに健康であることです。健康のために痩せることは必要ですし、誌面上で「ダイエット」は禁句ではありません。
 しかし「痩せる=美」と勘違いして、必要以上にダイエットして拒食症になってしまったり、リバウンドに苦しみ体調を壊す人や、失敗してネガティブになり塞ぎ込んでしまう人が多くいます。健康でないと痩せていても可愛くないですし、海外の一流ファッション誌でも痩せすぎモデルは採用しないところが出てきましたよね。本誌で伝えたいのは、その人の適正体重で健康的なビューティです。痩せていなくても可愛い服があることを伝えたいのです。体型はデリケートな問題だし、悩みを抱えている人は多くいますが、本誌ではコンプレックス産業ではなくポジティブ産業にできないものかと考えています。
 発刊号の美容面では、小顔に見せるのではなく、丸顔をさらに丸く可愛く見せるメイクを紹介しています。また、ぽっちゃりの人は、肌のきれいな人が多いので、デコルテやうなじを見せるヘアスタイルを提案しています。美は痩せていることとイコールではないのです。
美の価値観が変わってきている?
 今まで、いくら物事が変わっても美の価値観だけはずっと変わらず、皆そこに近づこうとしていました。しかし、それが変わってきたのです。美が多様化し、美しい女性像が変わってきたこともあるし、女性の社会進出が進み、立場や地位など女性のスペックが変化してきたこともあると思います。男性の視線ではなく、自分の価値観、自分らしさに目を向ける女性が増えてきたことも考えられるでしょう。メディアがこれまで痩せ体型を持ち上げてきた反動もあるかも知れません。
 去年からぽっちゃりタレントの活躍が目覚しいですよね。ぽっちゃりタレントだけのバラエティ番組やドラマもあるくらいです。ぬくもりや懐の大きさが求められるようになり、「ぽっちゃり」は個性の時代になりました。
 また、震災後、今をしっかり生きようという風潮が強くなっています。ぽっちゃりでも、自分を否定することなく、強く、しっかり生きて行こうと考える人が増えているのではないでしょうか。
今 晴美氏
1999年、株式会社ぶんか社入社。女性向けコミック誌やお母さん向け「ねぞうアート」本など、幅広いジャンルの編集を手がける。10代の頃から大柄な体型で、従来のファッション誌では満足できないという経験もあり「la farfa」を発刊。

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