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“健康的に美しく”が当たり前の社会を

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順天堂大学大学院医学系研究科
健康・美容コンサルタント 本田 由佳氏

 20代女性の約3割がやせ型(厚労省:国民栄養調査)というほどダイエット熱心な国、日本。ただ、健康美容コンサルタントの本田由佳氏は、細さに美を感じる日本人のゆがんだ体型意識によって、健康を損なう女性が多いばかりか、低出生体重児が増えている現状があると話す。


日本のダイエットの問題点は?
 私自身、小学生から新体操を始め、常にダイエットと背中合わせの生活でした。高校生の時、2週間食べないという無理なダイエットをした結果、重症の貧血になり、自己流ダイエットの危うさを痛感しました。社会人になってからは㈱タニタに入社し、体重、体脂肪と健康の関係について研究していました。
 日本ではいま、ダイエット意識の低年齢化が指摘されています。文部科学省が毎年5~17歳を対象に行っている調査を見ると、2000年をピークとして身長は変わらないのに、体重は減少しています。タニタ在籍時の小学生の女子への聞き取りでは、標準的な体形でも自分が太っていると考える子供がとても多いことが分かりました。
 この行き過ぎた“やせ願望”は大きな健康リスクを伴います。昨年、第12回日本抗加齢医学会総会で、やせ願望が強い女性の健康状態について発表しました。2011年にミスコンテストに応募した63名の体格や体組成について調べたところ、体重、体脂肪とも一般女性に比べて著しく低く、実に60%がBMI18.5未満のやせ型でした。さらに、多くが月経不順や貧血、慢性的な筋肉疲労を抱え、栄養失調状態でした。
 そこまでして、日本の女性がダイエットに走る根底には「痩せていることが美しい」という意識があります。これは、単に雑誌モデルやテレビタレントへの憧れだけでなく、親の世代から受け継がれているもののように思います。ただ、世界的に見ると、この意識は確実に変わりつつあります。
世界の体型意識の変化とは?
 ミスユニバースジャパンファイナリストのサポートを数年間行っていますが、他国の代表を見ると、適度に筋肉と脂肪が付き、メリハリのあるグラマラスな身体です。それが、その国の美しいという基準なのでしょう。それに比べると、日本代表は線が細く、大会期間中に世界との違いを感じてくるようです。
 また、世界中で販売するグローバル商品の広告も日本と世界の差を感じます。ある国では少しぽっちゃりした“健康的な”モデルさんがCMしているのに対し、全く同じ商品を日本ではスリムなモデルさんが紹介していました。
 欧米諸国では、数年前に健康と美は切り離せないものとして、BMI18.5未満のモデルは、ファッションショーに出演できないなどの規制が出来ました。また、昨年、著名ファッション誌ヴォーグが、痩せ過ぎのモデルは紙面に掲載しない編集方針を打ち出したことも話題になりました。
 これは、不健康な女性の増加が、社会的問題化していることが背景にあるようです。胎児期の母親の栄養状態は、その子の将来の健康状態に影響すると考えられています。イギリスでは、この問題を医師やマスコミが集まって話し合うサミットが開かれたそうです。
 日本では2500グラム未満で生まれてくる低出生体重児が、30年間で倍増しています。日本も将来的に痩せすぎは良くないという意識に変わっていくかもしれません。
正しいダイエットのために気を付けることは?
 健康的なダイエットとは、筋肉量と骨量は減らさず、脂肪量と水分量を適正にすることです。
 日本人女性はとかく、体重を重視し、果物・野菜中心の“食べないダイエット”に走る傾向にあります。これでは、たんぱく質、必須アミノ酸など身体に大切な栄養が不足してしまいます。これらは、髪や肌の見た目に大きく関わりますので、美しくなりたいのであれば食事を抜くことはナンセンスです。
 また、すぐに結果を求めすぎると思います。よく1週間で1キロ痩せたいなどと聞きます。ですが、1週間で1kgの脂肪(約7000kcal)を燃焼するためには、フルマラソンを3回走る程度の運動が必要です。これはとても無理でしょう。お勧めしているのは、姿勢を良くして座る方法です。猫背のC型の座り方でなく、背筋を伸ばしたL型で座ることで、1日当たり40~50kcal消費量がアップします。習慣化すれば、何も食事を変えなくても4か月程度で1kg痩せられるのです。
 私は女性の健康美の基準をBMI18.5以上、体脂肪21%以上と設定しています。いまこの範囲なら、無理に痩せようとせず、維持するだけで良いことを伝えていきたいですね。
本田由佳氏
順天堂大学スポーツ健康科学部卒業後、東京大学大学院医学系研究科母性看護学助産学分野客員研究員を経て、現在、順天堂大学にて“産むための体づくり“の研究を行っている。4月からは丸ノ内朝大学 春学期 クラス「【女性限定】美活・妊活クラス、~いつかのために今からできること~」の講師を務める。
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