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【特集 化粧品】“ステイホーム”需要に商機  販売チャネルの“主戦場”はオンラインに

経済産業省の発表した2019 年度の生産動態統計によると化粧品の販売ベースの市場規模は1兆7,611 億円で、前年比119%となった。毎年拡大を続けてきた市場だが、20 年度は1~ 10 月までの市場規模が1 兆2212 億円で前年同月比84%と下回ることが予測される。消費行動が減少する中、“マスクメイク”や“免疫力”といった、新たなニーズやオンラインを活用したサービスが今、チャンスにつながっている。


スキンケアの意識が加速

昨年はマスクの着用や外出自粛の影響で、リップや日焼け止め、ファンデーションなど、メイクアイテムを中心に売れ行きが減少し、美容液や肌荒れを防ぐスキンケア商品、マスカラやアイメイクなどの売上が伸長。製品によって大きく明暗が分かれた。SNS やyoutube の配信では“マスクメイク” の紹介動画が多数アップされ、需要の掘り起こしにつながった。
またマスクが原因の肌荒れケアをコンセプトとした商品の増加、アルコールによる肌荒れでノンアルコールのナチュラル・オーガニック系のスキンケアアイテムも注目が集まっている。同時に化粧品メーカーが、本業の強みを活かして独自の除菌アイテムを開発・販売するなどの動きも見受けられた。
昨年12 月に発表された「@cosme ベストコスメアワード 2020」では「肌の免疫力をあげたい」という消費者意識の高まりに応える「美肌菌」に着目した「ジェニフィック アドバンスト N」(ランコム)が総合大賞に選ばれた。さらに「試す」ことが難しい環境に対応した有償サンプルの提供など、今のニーズに対応した商品企画も消費者のこころをつかんだようだ。
スキンケア商品が大賞を受賞したのは7年ぶりで、@ COSME の口コミでも韓国で人気の肌の損傷改善や再生効果が期待できる“シカクリーム” のワード出現率が5 倍以上に伸びている。同アワードの総評においても消費者の関心が肌を綺麗にみせるベースメイクから、素肌を綺麗にするスキンケアに変化しつつあると指摘。メイク機会の減少で、その傾向がさらに加速しているのではと分析する。

EC や通信販売で需要増

富士経済が昨年発表した化粧品の国内市場調査によると、2020 年の化粧品の売り上げを価格帯別で見たとき、高価格帯の化粧品ブランドは、百貨店や訪問販売での販売比率が高いため休業や営業自粛の影響が大きく、前年比2 桁減が見込まれるという。その一方で中価格帯の化粧品はドラッグストアや総合スーパーなどの休業も少なく、通販ブランドなどが巣ごもり需要を取り込んだことで、高価格帯ほどの落ち込みにならないとみている。低価格帯では、さらに影響が少なく、高・中価格帯からの需要シフトが期待できることから、市場の落ち込みは限定的だという。
販売チャネル別に見ていくと、昨年前半は百貨店をはじめとした対面販売を中心に売り上げが減少、一方でEC や通販が伸長した。某化粧品受託企業によると「10 ~ 11 月頃から年末商戦での巻き返しを図るべく、小売りからの注文が集中した。前年比ではプラスになった」という。同様の声は他の企業からも聞かれ、受託企業ではニーズに合わせた提案で売り上げを伸ばす企業も出ている。
またインバウンドの売り上げは落ち込んだが、越境ECは引き続き好調だ。中国ネット最大手アリババグループが開催した「独身の日」イベントでは、輸入ブランドの流通総額ランキングの4 位に花王、5 位に資生堂がランクイン。製品の売り上げランキングの5 位にスキンケアセットが入っている。さらに今年に入ってからも直接の行き来こそないが、中国や韓国をはじめとする海外バイヤーが、この機に日本の商材を買い付けようとする動きも出ており、一部で国内にいるバイヤーや海外からの問い合わせが増加しているようだ。

SNS やオンライン活用サービスが拡大

店舗を含む化粧品サービスの形態も今後変化を求められる。(一社)日本化粧品検定協会 代表理事の小西さやか氏は、『Line @』などのSNS を活用したデジタル接客などの取り組みや、美容部員をインフルエンサーに起用した販売戦略などがますます増えていく」とみている。
コーセーでは、銀座のコンセプトストア「Maison KOSÉ」をオンライン上に再現したバーチャルストアをオープン。また資生堂では国内外でライブコマースの取り組みを強化している。ビューティーサイエンティストの岡部美代治氏は、昨年8 月の弊社オンラインビジネスセミナーで、「今後リアルの接客とオンラインによるセルフケアを合わせたサービスが普及し、AI、ビッグデータを活用したパーソナルな美容カウンセリング実現への動きがますます加速していく」と予測している。
国外に目を移したとき、消費意欲の高さとデジタルへの購買行動への早期のシフトにより、欧州や米国に比べ、アジアの化粧品市場は2021 年には回復基調に戻るとみられ、2024 年には世界の市場規模の約4 割を占め、市場をけん引していくと予測されている。(ユーロモニターインターナショナル調べ)アジアの化粧品市場が世界市場でさらに重要性を増していく中で、日本の化粧品がどのように※市場データは四捨五入している 存在感を出し行くかが問われている。

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