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来るべき時に備え “連携”でウエルネスを磨く

2020 年は日本のウエルネスを世界中に発信するはずの年だった。しかし、インバウンドはゼロとなり、国内の移動や対面さえも制限された。しかし、今こそ日本が持つウエルネスを自らの目で見直し、磨き、来るべき時に備える時。WITH コロナ、AFTER コロナの世界にこそ日本のウエルネスは大きな価値を持つに違いない。


世界のメンタルヘルス市場は12 兆円に

2019 年の世界のウエルネス市場規模は470 兆円(GWI ※ 1 調べ)とされ、年6%ペースで拡大を続けてきた。昨年マイアミで開催されたGWS(※2)では、「メンタルウエルネス」が最大の話題となった。2019 年の市場規模は12.6 兆円(GWI 調べ)とされ、コロナ禍の影響を受けて今後の市場拡大を示唆した。調査では、「メンタルウエルネス」は4 つのセクターに分けられている。①「睡眠や空間・感覚」関係(5.2 兆円)は、もっとも大きな市場で、続いて②「脳活性化栄養所食品」(3.6 兆円)、③「自己改善」(3.5 兆円)、まだ小さな④「瞑想・マインドフルネス」(0.3 兆円)となる(下表参照)。今後も、自分の生き方や、自分の健康に向き合うことが増えている背景があり、いずれのセクターもさらに拡大していくことが予測されている。

ウエルネスニーズが表面化

コロナ禍は我々の生活に大きな変化をもたらした。まず「オンライン」の活用。しかしオンラインを知ったことで、実際の「体感」「実感」や「人とのふれあい」というリアルの大切さを再認識することとなった。リアルの価値を高め、普段のコミュニケーションにオンラインをどう活用するかが鍵となる。当然、安心・安全、健康意識、免疫意識、エビデンス意識が高まったことは言うまでもない。新たな課題を見据えビジネスの機会としなければならない。自分や、生き方を見つめる時間が増えたことで、ライフスタイルが「ウエルネス」「幸せ」志向へ変化してきたことは間違いない。
インバウンドがゼロになったことで、国内市場の見直しや今ある資源の重要さが見えてきた。「こうなるだろう」「こうなるべき」といったコロナ禍前に描いていた日本の将来の姿への流れが一気に進むことになる。「量から質」「超・スマート社会」「高品質化」「パーソナライズ」「SDGs」「ナチュラル&オーガニック」等。前出のGWI は、「SIX WELLNESSTRENDS FOR2021」の中で、今年のウエルネス産業について①ヘルスケアとウエルネスの収斂化、②免疫強化、③タブー領域(お金、死、性)の拡大 ④自然志向強化、⑤ホームウエルネス、⑥抗菌やホームトリートメント美容の方向性を挙げている。やはりコロナの影響が色濃く出たトレンド予測となっている。

海外から見た「J ウエルネス」

近年、海外のウエルネス専門家や投資家は日本に注目していた。これまでウエルネス先進国が模索してきたポストウエルネスのヒントが日本にありそうだと。「温泉」や「和食」「おもてなし」といった伝統のウエルネスコンテンツはもちろん、安全や清潔な街並み、信頼の生活システム。伝統と最先端のテクノロジーとが見事に融合している日本にウエルネスの本質を見ていたのだろう。「心身の調和」「自然との調和」「社会との調和」だ。
いまコロナ禍によって、日本に一層の関心が高まっている。2020 年のグローバルウエルネストレンドレポートの「J ウエルネストレンド」では、日本の「長寿」「生きがい」「お香」「森林浴」「温泉療養」「精進料理」などが紹介されて、パンデミックの後の「寺院滞在のウエルネスツーリズム」や「温泉文化の輸出」の期待にも言及している。日本が持つ自然資源や伝統、精神性に期待しているのだろう。
2019 年、2020 年の「スパ&ウエルネスシンポジウム」や「ウエルネスビジネスミーティング」(9 月、Diet&Beauty 内)で日本ならではの「J ウエルネス」の方向性やチャンスについて議論を重ねてきた。会議では、「J ウエルネス」をカタチつくる要素として「長寿」「水」「自然」「四季」「空間」「人」「温泉」が話題となってきた。参加者のひとり琉球大学の荒川雅志教授は、今後の日本のウエルネスの確立のためには「徹底した和の追求」と「長寿との紐付け」が重要と指摘した。

連携で「J ウエルネス」構築へ

個別化医療が進もうとする今、同様に、より効果を求める健康・美容の個別化(パーソナライズ)が求められている。多数のサービスやプロダクツが一人ひとりの質の高いウエルネスを実現する目的で、互いに連携することが重要だ。それは、日常と非日常、都市と地域、美容健康の異業種、他のウエルネス分野の業態(不動産、職場等)、テクノロジーと伝統とをつなぐこと。
つまり「J ウエルネス」とは、国内外の新たなウエルネスニーズに応えるために、日本の美容、健康産業が垣根を超えて連携し、伝統や最先端の知恵を結集した新しいサービスの姿なのだ。そこには相手を喜ばせたいという「おもてなし」の精神が必ず貫かれている。

※1 GW I …Global Wellness Institute
※2 GWS…Global Wellness Summit

特集の続きはこちら ⇒ 「DIET&BEAUTY新春号」(電子版)

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