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おもてなしのモノづくりで世界と戦う① ビールを通じて伊勢や日本の魅力を発信~フェムテック市場にも挑戦(伊勢角屋麦酒社長 鈴木成宗)

三重県伊勢市で1575年創業の二軒茶屋餅角屋本店の21代目社長の鈴木成宗氏は、1997年に新業態の伊勢角屋麦酒を創業。クラフトビール事業を開始した。「世界で戦えるクラフトビールを造る」と、創業3年でJAPAN BREWERS CUP受賞。その後ビール界のオスカーInternational Brewing Awardで2017年・19年・21年と3大会連続の金賞受賞を果たした。

なぜ、ビール作りを?

当社はもともと、1575年に創業した餅屋です。私は21代目で、伊勢で生まれ育ちました。大学を卒業して家業を継ぎましたが、“家の二階で起きて、下の階で餅を作って店先で売る”という半径20メートルの世界で生きることに飽きてしまいました。大学の専攻が微生物だったので、「微生物と遊べる、酵母と遊べる」と始めたのがビール作りです。ビールであれば世界と繋がれるし、競争ができるという直感もありました。

ところが、いざ自分でビールを作って営業に行って配達しても、周りからは餅屋のバカ息子の道楽としか見られない。それならば自分でブランドを作るしかないと思い、手っ取り早いのは世界大会で金賞を取ること、そして自分が審査する側になって経験を積むことだと資格を取得して、審査員をしながらビールを作り続けました。ようやく2003年に、『オーストラリア・インターナショナル・ビアー・アワード』で金賞とトロフィーアワードをいただきましたが、実際には金賞を受賞してもすぐにビールは売れません。そんなとき、ある企業から、東京のベルギービールレストランに当社のブランドを使いたいという依頼があり、その第一号店が2018年に東京・八重洲に看板店としてオープンし、現在に至ります。私たちは、日本のビールを面白くしたい。だからこそ、世界に通用する本物を作りたいんです。「ビール界のオスカー」といわれる大会で3連覇することができた現在でも、その気持ちは変わりません。

日本のものづくりの魅力とは

アメリカには、クラフトビールがすでに一万種類くらいあります。そこで日本の魅力を打ち出していくためには、清酒酵母やワサビを使うのもひとつの方法かもしれません。けれど、それだけでアメリカ人の心を捉え続けるのは難しいでしょう。一方で、アジア諸国からは共感を得やすいという面があります。当社はタイや東南アジア圏にビールを輸出していますが、特に親日国の方々には品質を高く評価していただいています。実際、インドで新しいビールを立ち上げるという企業から協力の打診も来ています。

たとえば絵を描くとしたら、真っ白な紙を用意して、そこに描きたい絵を描かないと美しい絵にはなりません。同じようにビールもきれいなベースを作ることに、とことんこだわることが大切です。当社でも、発酵の主役である酵母を伊勢の自然界から採取したことがあります。伊勢は面積の1/4を神宮が持っていますから、いわば森の国です。その森の中から酵母を採ってきてビールを作りました。伊勢は、日本という単位で見ると「神道の聖地」ですし、世界という単位で見ると自然と共存している数少ない宗教の聖地のひとつです。大きな視点で見れば見るほど、長い時間軸で見れば見るほど価値が際立ってくる存在だと思います。日本には長い歴史があり、そして日本のものづくりは毎日毎日薄い紙を一枚ずつ積み重ねていくような、そんな技術の積み重ねです。コツコツ重ねていって、5年経って初めて厚みを感じる。そんなところに、他にはない強みがあるのではないでしょうか。

新規市場の挑戦としては

ビールに使うホップの成分の中に「キサントフモール」という物質があり、それが女性のウェルネスやフェムケアに非常に効果が高いというようなエビデンスが出ています。そこで、20~50代の女性に向けて清涼飲料として新たな市場を創造しようということで取り組んでいます。ご存知のようにウェルネス分野には大きな可能性があります。

三重県内の企業と全国のパートナー企業とが共に創るビジネスプログラム『TOKOWAKA-MIE BUSINESS BUILD』にも賛同しています。このプロジェクトでフェムテックブランドを展開する㈱DELICEさんと出会いました。遂に、フェムテック、ウエルネスの市場に向けてアロマホップの機能性飲料が登場することになります。新分野の市場にどんな風に受け入れられていくのか楽しみです。

私たちはこれからもビールを通じて世界に挑戦しながら、同時に伊勢や三重の魅力、日本の魅力を発信し続ける企業でありたいですね。

すずき・なりひろ

二軒茶屋餅角屋本店社長。日本ホームブルワーズ協会会長。1967年三重県伊勢市生まれ。東北大学農学部卒業後、家業の二軒茶屋餅角屋本店入社。97年伊勢角屋麦酒創業、クラフトビールは国際大会の受賞多数。

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