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【話題追跡】『固有記号』分岐点 廃止か現行維持か!?

消費者庁は7日、現行の58基準を一本化する「食品表示基準(案)」について意見募集を開始した。340頁にも及ぶ膨大な基準案。アレルギー表示や栄養強調表示などに関するルールが抜本改正され、大多数の食品は表示変更を余儀なくされる。中でも健康食品業界の関心事となっているのが、以前も当欄で取り上げた「製造所固有記号制度」の見直しだ。業界再編を加速させる引き金になると警戒する企業もある。
 新たな食品表示基準案では、製造所固有記号について、原則として2 工場以上で製造する場合に限って例外的に認めることとしている。この案の通り決定すれば、1 工場で委託製造している健康食品は、どこの受託企業が作っているかが明確に示されることになる。
 ただし固有記号については、消費者委員会の調査会で合意が得られておらず、継続審議事項が残っている。このため、先月末に行われた同委員会の食品表示部会で出された6 つの提案(下記①~⑥)を付記した上で意見募集を行うとことになった。調査会では「この状態でパブコメにかけるのはよくない。議論が足りない」との声も挙がったが、押し切られる格好となった。
① 製造所又は加工所の所在地を表示することが原則であり、例外規定である製造所固有記号の使用は認めない。
② 例外規定を認める条件を明確化し、表示面積により記載が難しいなど、定められた条件を満たした場合のみ製造所固有記号による表示を可能とする。
③ 例外規定として、「共用包材によるコスト削減のメリットがある場合」、「表示可能面積に制約がある場合」に加え「販売者が食品の安全性の責任を有するため販売者を表示する場合」を追加し、この3つのそれぞれの場合において、製造所固有記号による表示を可能とする。
④ 例外規定として、自社の複数工場で生産をしている場合のみ製造所固有記号による表示を可能とする。
⑤ 消費者が製造所を知りたいということであれば、現行データベースの改善、応答義務、知りたい製造所を固有記号からたどれる仕組み(消費者の検索利用)、製造所固有記号の再審査制の4つの取り組みを行なう。
⑥ 現行制度の問題点が整理されていない段階で、実態を踏まえずに大きな改正をすべきではない。冷凍食品の農薬混入事件と製造所固有記号とは直接の関係はないことから、現時点では、明らかに問題とされている消費者庁のデータベースの改善措置のみ講じる。
 この6 つの付記の内容は両極端で、どちらに傾くかによって企業の対応は全く異なるものになる(右表)。①として示された提案は、固有記号制度の実質廃止を求める内容。⑥では、明らかに問題とされている消費者庁データベースの改善措置のみ講じるとするものだ。このデータベースとは、現在行政機関のみが閲覧可能なもので、約89万件の固有記号が登録されている。すでに使用されておらず廃番となった記号も含まれており、しかもそれがどの程度あるのか、消費者庁でも把握できていないという問題点がある。このデータベースのみ改善すればよいとするのが⑥の意見だ。


 本社が先日実施した固有記号制度に関する勉強会。参加者からは見直しによる影響を懸念する声が相次いだ。「ただでさえ表示スペースが限られているのに…」「コストがかかる」「販売者と製造者のどちらに電話すればよいか、消費者が混乱する」「沢山の商品を扱う製造者が問い合わせに対応する体制をつくるのは事実上不可能」といった意見があった。このほか業界内からは、「製造者がオープンになれば、それを見て別の製造者が切り替え営業をかけるのは確実」と見る向きもあり、業界再編が加速するとの指摘も。ただ、矢面に立つ受託企業の中では、「方向性が決まっておらず、今はまだ動けない」という企業も少なくない。
 意見募集は8 月10日まで実施。その結果を踏まえて、必要に応じて案を修正し、消費者委員会に諮問、食品表示法の施行に合わせて来年6 月27日までに新基準を施行する。なお猶予期間は、加工食品の場合2 年という案が示されている。消費者庁によると、固有記号についてもこの猶予期間が適用されるとしている。

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