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プロテイン市場、ライトユーザー急拡大(特集/スポーツニュートリション)

今年はコロナ禍で、オリンピックはじめ国内のスポーツ競技会は延期や中止が相次いだ。学生、社会人を含め競技への参加者は、スポーツニュートリションの主な利用者層であるため、関連各社は需要への悪影響を懸念していた。しかし、ここ数ヵ月はプロテインをはじめスポーツニュートリションの分野には大きく追い風が吹く状況となった。「巣ごもり」や「リモートワーク」での運動不足解消から、ウォーキング、ジョギング、宅トレが注目されライトユーザー層の利用が広がっている。

「巣ごもり」「在宅ワーク」影響 ウォーキング・ランニング人口は急増

パンデミック以降、外出機会が減少し、在宅ワークが拡大したことから「コロナ太り」が問題化した一方、運動不足解消のためウォーキングやジョギングといった軽運動を始める人が増えている。

㈱ストライドが今年6月に国内の成人1,324人を対象に行った調査によると、「外出自粛期間に運動不足を感じた」人は58.6%、「外出自粛期間の前と比べて、ウォーキングやランニングを行う頻度が増えた」という人は59.5%にのぼった。

自宅でトレーニングを行う「宅トレ」も注目されスマホアプリや、YouTubeチャンネル、オンライン講習サービスが相次いでオープンしている。

経産省「特定サービス産業動態統計調査」によると今年4 ~ 6月のフィットネスクラブ利用者数平均は昨年平均と比較して約72%減、7 ~ 9月は23%減と影響は大きいが、物販へ注力するフィットネスクラブも多い。

パンデミック後、新たにEコマースサイトをオープンしオリジナル商品を開発した事業者や、サプリと器具、オンライン講習をセットにしたサービスを開始した事業者が見られる。物販については「実店舗での売上は減少した一方でECが好調」という声も大手フィットネスクラブ担当者から聞かれた。

ライトユーザー拡大「運動・栄養・美容」 一体に考える女性層

運動への参加者が増加傾向にある中、ライトユーザー向けのプロテインの販売が伸びている。㈱明治の担当者は「4~ 5月にかけて粉末プロテインの販売量が前年比で2 ケタ増加した。競技者向けの専用プロテインよりも、一般向けの販売が大きく伸び、ユーザー層の裾野の広がりを感じる」としている。

富士経済が10月にまとめた予測値では、2020年の粉末プロテイン市場、は昨年から17%伸長し680億円となる見込みだ。健康イメージがより強く環境負荷が少ないとされる「植物ベース」のプロテインも配合商品に広がりを見せはじめ、大豆プロテインのほか、エンドウ豆プロテイン、さらにはヘンプ、チア、パンプキンなどが流通する。

女性向けのプロテインでは「グルテンフリー」「人口甘味料・着色料・香料不使用」など、素材にこだわる商品も多くみられる。「運動を取り入れながら、美と健康にこだわる、大人の女性向けのプロテインがこれから伸びるのでは」とするメーカー担当者の声も聞かれた。

タンパク質の普及を進める(一財)日本プロテイン協会の担当者は、「今後プロテインユーザーは、シニアや女性を含め、より一般の人へと広がる。ライトユーザーが増加する今後はメーカーのさらなる商品開発も期待される。運動とプロテインで健康寿命を延ばすよう普及していきたい」と話している。

運動不足解消ニーズから抗疲労訴求まで、多彩な素材

アミノ酸カテゴリーでは、飲みやすさからゼリー商品の売上が引き続き堅調。海外では脂肪の燃焼を助けるカプシノイドとアミノ酸を配合するサプリも注目され、日本でも今後の動きが期待される。

アミノ酸原料はクレアチン、L-シトルリン、L-カルニチン、BCAAなどが主流で、筋肉の強さを引き出すとされる新素材のβアラニンも利用が広がる。また、必須アミノ酸9種類を含むEAAは摂取して高強度トレーニングを行うことで、筋肥大が狙えるとして注目を集める。

独自の配合比を提案するサプライヤーもあり、サンクトは顧客要望に応じた配合比のアミノ酸ミクスチャーの供給に注力。味の素ヘルシーサプライは、筋タンパク質の合成を促すシグナルの働きをする“ロイシン”を高配合した必須アミノ酸ミックスを展開する。

スポーツニュートリションは他にも、クジラ肉から抽出され実感性の高い抗疲労素材としてバレニンが注目を集める。HMBは、プロテインとあわせて筋肉増強に効果的な素材として知名度と人気が高まり、サプリに配合される例が増えている。

また持久力向上のエビデンスをもつ植物発酵エキスや、ミトコンドリアのエネルギー産生を高め脂質代謝をアップするアスタキサンチンなど、さまざまな機能性を持つ素材の提案が進む。

このように多種多様な製品が流通する中、アスリートはもちろん一般のユーザーへの安心に繋がるアンチドーピング認証を取得するメーカーも増加。インフォームド・チョイスなど海外認証のほか、国内では日本分析センター、イルホープなど成分分析のみを提供するサービスも登場している。

アスリートのみならず、ダイエットや美容目的などライトユーザー層が広がるスポーツニュートリション市場。期待はさらに高まる。

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