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「菓子」「パン」「和食」など、サステナブルに照準(特集/昆虫食)

食用昆虫が世界的に注目を集めている。その背景として挙げられるのが人口増や新興国の経済発展に伴う将来的な食糧不足問題だ。国連の分析では2050 年の世界人口は100 億人に迫る見通しで、肉の代替となるタンパク源確保に向けた取り組みが世界的規模で進んでいる。近年注目を集める昆虫食の代表格は食用コオロギ。国内では良品計画や敷島製パンがコオロギ粉末を使用した昆虫食で市場に参入した。行政サイドでは、農水省によるフードテック官民協議会が昨年発足し、品質の担保に向けた法整備などの議論が進む。機能性については血糖値上昇抑制作用などの研究が行われている。

“食用コオロギ”大手企業が参入良品計画「即日完売」

“ゲテモノ扱い”されることの多かった昆虫素材が、食糧危機を救う代替食品として利用できると近年話題を集めている。

日経トレンディが報じた2021年ヒット予測では、昆虫食が5 位にランクイン、“昆虫を食べる”という食のスタイルがじわりと浸透している。

国内市場では大手企業の新規参入も相次いでいる。

「無印良品」を展開する良品計画は昨年、食用コオロギパウダーを使用した“コオロギせんべい”を発売。「初回納品分は即日完売し、再度納品分もほぼ1 日で完売した」という。

昨今の売れ行きについて、「毎月1 回の頻度で納品するコオロギせんべいは、ほぼ一週間程度で完売する」という。

今年は敷島製パンも市場に参入した。食用コオロギ粉末が入った“フィナンシェ”と“バゲット”を通販ルートで展開している。

開発の経緯について、「フィンランドのメーカーがコオロギ粉末を使用したパンを2017年に発売して話題となったことがきっかけ」といい、SDGs推進に向けた取り組みの一環と話す。

「低温長時間発酵により酸味やうま味を引き出した。喫食経験のない人にもぜひ試してほしい」としている。原料サプライヤーへの問い合わせも多くなっているようだ。

取材先からは「サンプルの依頼が今年から多くなった」「食用昆虫に取り組んでいなかった企業からの問い合わせが増えている」といった声が多く、製菓・製パン、製麺、健康食品メーカー、レストラン、ペットフード関連、お土産物、スポーツフード製造企業などからの問い合わせが増えているという。

このほか、「法整備が整えば新しく市場に参入する企業も増えていくのでは」と推測する声もあがっている。

本紙が調査したコオロギ粉末の原料価格はキロ7,000円~9,000円(タイ・ベトナムなど東南アジア産)。取材先からは、「海外と比較すると値段が高い。今の半分以下に抑えることが市場拡大に必要」との声が多く聞かれた。

コオロギ粉末について、旨味を訴求するサプライヤーからは、「和食の出汁原料としての用途開発も市場拡大のキー」との声もあがった。

昆虫食普及策の議論が本格化「フードテック官民協議会」発足

農水省は昨年10月、代替タンパク質の開発や普及を推進する「フードテック官民協議会」を発足した。

サステナブルをテーマとした食品開発について、食品企業やベンチャー企業、研究機関と共に食用昆虫をはじめとした代替食品についての議論を本格化させている。

この協議会は植物肉や宇宙食などの分科会がそれぞれ設置されており、食用昆虫では“昆虫ワーキングチーム”が普及策などを議論している。

取材先からは、「食用昆虫をJAS法などの基準で規定化したらどうかといったことが話し合われている。法によって規定することで、消費者に安心感を与えることができるとともに、生産者も大規模に生産できる。原料価格を抑えることも期待できる」といった声が聞かれた。

一方、「規定による縛りが厳しくなれば、伝統的な日本の昆虫食が自由に販売できなくなる恐れもある。日本はもともと昆虫を食べる文化があった。新しい昆虫食との融合が課題」と指摘する声もあった。

ヨーロッパでは2018年、新規食品(ノベルフード)に関する規則が施行された。昆虫が新たに食品として規定されている。

フィンランドではヨーロッパイエコオロギ、トノサマバッタなどが食用として製造・販売することが認められている。

コオロギ=“リン脂質素材”として期待“血糖値上昇抑制”のエビデンスも

食用昆虫の栄養組成や機能性に関する研究が進んでいる。

北里大学獣医学部の動物資源科学科講師・落合優氏は、トノサマバッタやシルクワーム、コオロギを対象にした研究を進めている。同氏によると…

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