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不易流行

 松尾芭蕉の言葉らしい。変えていいものと変えてはならないものがあり、「不易」とは変えてはならぬものということだと。一方、「流行」とは今の言葉に通じるが、流れに沿い変化していくことか。関西の新工場竣工式での、ある銀行の代表の挨拶にあったのが、この「不易流行」であった。しかし、印象としてわが国では、変わるべき多くのことがむしろ変わらずにきているような気がする。同氏によれば、「100年以上続く企業というのは、0.2%とか0.3%と言うことで、1,000社に2、3社しかない。ちなみに200年以上となると、中国では数社、韓国では0で、日本にはかなりある」という。この話は、どこかで読んだ気もするが、それが日本にとって良いことかというと、果たしてそうだろうか。
 
 参考になるのは「食品と開発」の1、2月号。みずほ銀行産業調査部・田中真吾氏の「食品企業の国際比較」の論文記事である。欧米と日本の食品製造業の経営比較では、日本の企業の平均の営業利益率は3%と低く、ネスレ、ペプシコなどグローバル企業では10~30%と驚異的な高さだ。背景には問屋流通などの日本独特の仕組みなどもあるが、島国で、大きな競争がないためかもしれない(細かい競争はあるのだが)。
 
 また、売り上げ重視の日本企業に比べ、売上高のオーガニック成長率やオペレーティングマージン重視の西欧と、会計基準も異なるが、視点や評価のポイントも異なる。企業買収や部門売却をくり返す欧米企業の体質の強靭さが見えてくる。また、変化の事例とし、ダノンの現在と15年前の「事業ポートフォーリオ」、「地域ポートフォーリオ」の二つが紹介されているが、それをみると、ダノンのような巨大企業が如何に劇的な変化を遂げてきたかがわかる。今日の日本企業の危機は、経営者責任も問われると思わざるを得ない結果である。


 冒頭の挨拶を聞きながら、韓国や中国が日本企業に遅れているのか、或いは、逆なのではないかと考えていた。この論文は、皮肉にも変化こそが生き残りの道だと指摘する。ダーウィンの進化論に、「優れていたから生き残れたのでも、強いから生き残れたのでもなく、変化に対応できたから生き残れたのだ」という一節があったが、まさに企業の生き残りにも進化論に通じるものがある。オープンイノベーションを拒否すれば、ガラパゴス化が進行し、ソニーやパナソニック、サンヨーの悲劇が待っているということを考え、立ち止まらない攻めの経営、流行、変化を続けなければならないのではないか。

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