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「建議」は「消費者の声」に何も答えていない

 二年半にわたる 消費者委員会の議論が「建議」として出されたが、これまでの議論の通り、消費者クレームの問題に多くを割き、消費者が求める機能情報の提供などの要望にはほとんど触れず、内容の乏しいものになった。「消費者トラブルの7割が契約・解約や販売方法だ」としながら、坊主憎けりゃ袈裟までで、6割の利用実績のある消費者の期待に背を向け、健康食品の否定的な部分をフォーカスした規制対策に終始する内容だ。
 4項目のうち、重点を置いたのは①表示・広告の適正化で、機能表示の導入を阻んで正常な情報伝達ができない状況を放置したまま、規制強化のみを主張している。②安全性に関しては、医療機関が対処できる情報提供を求めているが、医療機関の現状からは実行不可能に近い課題だ。何のためにサプリメントアドバイザーがあるのか。また、③機能情報の提供については、海外情報(研究だけでなく機能表示の導入はどうするのか)や特保の情報開示などでお茶を濁し、真剣な消費者の機能情報の提供への回答を拒んだ。④健康食品の消費者理解については、もはや過半数が利用し、利用者が即刻知りたいとする情報に対し、何の解決策も示せなかった。


 6割の消費者がサプリメントを利用し、利用者の6割が満足しつつ、一層明確な機能表示を求めている――これが議論の始まりである。しかし、これはある意味で異常事態かもしれない。医療制度や予防医療への国民的な不満と批判が極めて大きく、国民が自ら行動していることの証左だ。都のモニター調査でも、「健康問題に行政が口を挟むな」という声があった。実際、一方で消費者に適切な情報をと言いつつ、評価モデル事業などの成果を曖昧にし、消費者団体ベースの消費者クレームをどうするかに終始し、簡単にいえば、適切な制度化の議論はできなかった。
 世界中で、小さな行政機関と、NPOの活動の広がりがあるのは、消費者の多様なニーズに答える選択肢の提供が行政機関では無理だからである。むしろ派生する消費者トラブルについてのみ、消費者庁や委員会が冷静で合理的な対応をすればいい。「建議」の結論は、健康食品の制度化は民間で責任を持って行い、消費者庁や消費者委員会は、消費者トラブルの問題に限り、消費者利益を考慮しつつ、合理的な対処をするということか。産業界は、建議をよく読み、産業界としての大きな責任を粛々と果たしていく必要がある。

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