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長寿国ニッポン、サルコペニア対策など急務

 日本人の平均寿命が延び、男性は過去最高、女性は再び世界一に返り咲いた。
 一方で、超高齢社会への対策が急務であるという現実も突き付けている。
 人間ドック受診者の3割が肝機能異常・高コレステロール、膝の痛みを抱える人1800万人、要介護高齢者の17%が低栄養状態―― ショッキングな実態も数値で次々と示され始めた。
 国は「健康寿命の延伸」に向けた対策に乗り出すが、個人の行動変容が必要な部分もあり、実現への道は平坦ではない。


 2010年のデータでは、平均寿命と健康寿命の差は、男性が9.13年、女性が12.68年。
 骨折等による寝たきりといった“不健康な期間”の解消が急務となっている。
 2012年度の厚生労働科学研究では、高齢者の栄養やサルコペニア(加齢性筋肉減弱現象)などに関連する報告書が複数まとまっている。「膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究」では、膝の痛みを抱える人は1,800万人、腰痛をもつ人は2,770万人と推計。また、年間111万人が要介護に移行することがわかった。
 「地域・在宅高齢者における摂食嚥下・栄養障害に関する研究」では、要介護高齢者の16.5%が「低栄養」と判定された。また34.2%に何らかの嚥下機能障害があることがわかった。
 サルコペニア対策で、栄養状態低下が顕在化する前の早期介入の必要性を指摘したのは「虚弱・サルコペニアモデルを踏まえた高齢者食生活支援の枠組みと包括的介護予防プログラムの考案および検証を目的とした調査研究」報告書。新たな概念として「食の加齢症候群」を提唱した。不健康な食環境による栄養不良が筋肉減少を引き起こし、負のスパイラルがいくつかの段階を経て進行するという新概念だ。
 研究班では「食の加齢症候群」が一度発症すれば、「最終的には経口摂取が困難になり健康寿命の短縮につながる」としている。
 サルコペニア予防は「食の安定性」が重要と指摘。不具合が顕在化する前段階から“国民に早期の気づき”を与える必要性があるとしている。
 サルコペニア対策には「運動+アミノ酸」が有効だが、運動を継続しないと効果が消失してしまうとしたのは「高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究」報告書。
 後期サルコペニア高齢者を対象とした試験で、運動とアミノ酸を組み合わせることで、筋肉量の増加や歩行速度の改善、膝伸展力の上昇効果を確認したが、介入終了3 年後の追跡データを解析した結果、改善効果はほぼ消失した。
 報告書では運動習慣の定着が極めて重要であることを指摘している。
 政府は6 月閣議決定した「日本再興戦略」で、国民の健康寿命の延伸を掲げた。
 しかし、健康な時は食事管理や運動など予防・健康管理を継続して行う意識が弱くなることが指摘されており、実現には個人の行動変容が欠かせない。
 最近ではスポーツシーンに合わせた健康食品なども上市されているが、こうした商品の活用が広がれば、日本再興戦略が掲げる「健康寿命延伸産業の育成」にもつながると期待される。

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