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【インタビュー】人が不要になるのでなく より重要になる時代へ ―アイスタイル Beauty Tech.jp―

日本の美容シーンをリードしてきたアイスタイル。来春からビューティテクノロジー領域をテーマにしたメディアも本格稼働する。担当する㈱アイスタイル Beauty Tech.jp 編集部 矢野 貴久子氏、服部 めぐみ氏にビューティテックの現状とこれからを聞いた。

健康産業新聞 アイスタイル Beauty Tech.jp 編集部

㈱アイスタイル Beauty Tech.jp 編集部 プロデューサー矢野 貴久子氏(左)/ Beauty Tech.jp 編集部 服部 めぐみ氏(右)
インタビュー:月刊「Diet&Beauty」編集部

ビューティテックのいまは?

矢野 企業はIoT 等を通じて膨大な個人データを手にしていきます。そして、それらを活用して、サービスはよりパーソナライズに向かっていくことは間違いありません。化粧品の選び方も個々に提供できるようになります。情報があり過ぎてどう選んでよいか分からない方でも、好みや肌質などのデータを入れて最適なものをリコメンドしてもらい、望めば最適なものを作ってもらえる時代です。問いかければスマートスピーカーでは化粧品やスキンケアについて事細かに説明をしてくれる。朝起きてミラーに触ると体調や血糖値を調べてその日の最適なスキンケアやメイクをアドバイスしてくれる。そんな人が介在しないサービスが、可能になってきています。ヒューマンタッチが好きな方はまだまだいらっしゃいます。実際に接することでしか知り得ないデータもあります。これからは、人の接客そのものが、よりラグジュアリーで贅沢に位置付けられていくのだと思います。一方で、あまり深いコミュニケーションを好まない若い世代がいることも事実です。現在の多くのビューティテックがターゲットとして力を入れているのは主にミレニアム世代です。「できれば人と会わずに解決したい」人達。チャットで質問してオススメされ、そのままECで買うような。全く店頭に出向かず、人と接することなく、商品との出会いから買い物までをスマホで完結できます。

AI 活用の中で上手くいっている注目サービスはありますか ?

服部 美容分野では、エスティローダのチャットボットに注目しています。「こんな色の口紅が欲しい」とカメラで撮ってチャットボックスに送ると、「この口紅よ」と向こうからリコメンドして送ってきます。1 件が片付くと、次は「他のも探してみませんか?」「どんな色のシェードか試してみたい?」などと次々に話しかけてきます。フェイスブックで出来るのも良いですね。

矢野 アプリをダウンロードするのは手間ですから、手軽さが良いのでしょう。友だちにも気軽に情報発信も出来ます。他には「MyBeautyChat」。「MyBeautyChat」には「MyBeautyMatches」というところがあって、ここはリコメンド、比較、購入ができます。

服部 自分の情報を最初に入力して好みを入れていった結果、「あなたに一番合っているのはコレ、二番目、三番目はコレ」と教えてくれます。「あなたが好きな色の中からこの色、データからだとこの色を勧めます」と、常に二点手法で売るメーカーさんもいらっしゃいます。

矢野 普段選ばない色だけどトライしてみようと思う人を狙ってAI のアルゴリズムに偶然の出会いを仕込んでいるのです。メイクアップツールはあらゆる色を使ってミリ単位でメークアップを作って、それをデータで残せるようになりました。メイクアップアーティストの神業がデータ化されることで再現できます。バーチャルなメイクアップアーティストによって実際のアーティストのデータが管理できて好きなときに学んだり、再現したりデジタルで試せます。

服部 ウェディング業界では、花嫁が事前に自分の写真を送れば好みのメイクを何パターンか出してもらいデジタル上で打ち合わせが出来るようになりました。

今後のビューティテックサービスの行方は?

矢野 昨年資生堂が宣言した「パーソナライズド化」は、美容業界全体でも益々進んでいくと思います。アメリカでは、パーソナルシャンプーもファンデーションも出ています。また、これまでの化粧品業界のように、大がかりなマーケティングで売っていくためには大手が有利でしたが、使い勝手や技術を活かしていい商品を作って売るのはスタートアップ企業でも充分可能です。中小が頑張れる場面がたくさん出てきたように思います。アメリカでは、SNS 戦略だけで売り上げを600 パーセントに伸ばした例もあります。データがたくさん集まれば集まるほどサービスの精度は上がっていきます。

服部 システム会社とOEM メーカー、そして中小のメーカーの三者が組んで新たなビジネスモデルを作ることも可能になってきました。

矢野 業界内の横の繋がりとか競合やライバル、大手、中小の概念すら不要な時代が来るように思えます。新しい価値が生まれるのでしょう。これまでの仕事が機械に代わるとしたら、そのことで、むしろ、新たな価値を生み出すことに時間や労力を使えると考えます。単純に効率化されたから人が要らないのではなくて、もっと便利にするために、もっと人の力が大切になると思います。

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矢野 貴久子  やの きくこ
雑誌編集、ネットメディア立ち上げを経て、プロデューサーとして、さまざまなネットメディアの編集、デジタルマーケティングに関わる。Beauty Tech.jpは、サイト立ち上げ準備からプロデューサーとして陣頭指揮を執っている。9歳の息子との戦いごっこで体力づくりの毎日。

服部 めぐみ  はっとり めぐみ
アイスタイル入社12年目。営業・EC事業・メディア立ち上げ・「歩くアットコスメ」として、国内外の美容情報を発信し、現在の職へ。

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