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海洋深層水の可能性は∞、産官学での研究進展(インタビュー:高知県室戸市 植田壯一郎市長/室戸海洋深層水㈱ 小松静雄社長)

四国の最南東に位置する高知県室戸市。面積の8割以上を山林が占め、海岸付近は特異的な海岸段丘になっている。日本で初めて海洋深層水が取水された土地として知られ、「室戸海洋深層水」は110億円以上の売上規模を誇る市の主力産業だ。高知県、大学、民間企業が連携した研究も進展。機能性表示食品を見すえた動きが活発化している。

小松:我々が海洋深層水に携わったのは23年前。やればやるほど非常に面白いものが出てきている。海洋深層水の大きな特長は、何といってもミネラルの豊富さ。我々は、まず大学との共同研究で、エネルギーを抑えつつミネラルを極力残す方法、それを大量生産するシステム構築に取り組んだ。

当初、1tの塩を作るには30tの海水が必要だった。これでは増産は難しい。考えたのは、海水の塩分濃度を高めること。7.5~8.0%が限度だったが、これを20%近くまで上げることを目標とした。現在は14~15%まで、高めることが可能になった。

やはり生産量が増えてこないと商売にはならない。県の補助金も活用し、来春には製塩量が1 日約1.5t、現在の倍近くとなる見込みだ。

植田:室戸は、日本で初めて海洋深層水が取水された土地。海岸から約2キロ沖がすぐに深海に落ち込んでおり、陸地から深海に最も近い場所と言える。また都市地域や工業地帯から離れ、海山の自然環境に恵まれている。

全国で深層水が取水される土地は、約10ヵ所あるが、その中でも特に恵まれた環境があると思っている。ユネスコ世界ジオパークにも認定されており、世界中の研究者が室戸海洋深層水の研究を進めている。

小松:高付加価値製品の安定供給の次に考えたのは、機能性の解析ができないかということ。2015年より高知県、室戸市、海洋深層水企業クラブの3社共同で進めた3ヵ年研究では、室戸海洋深層水の長期飲用で、腸内の短鎖脂肪酸が23%増加、エクオールが1.6倍増加するという結果が出た。

2019年3月には、室戸海洋深層水ミネラルを使用した木綿豆腐、絹ごし豆腐、おぼろ豆腐など13品目について「腸内フローラ改善健康食品」の特許を取得した。

機能性表示食品については、コロナの影響で進展がなかったが、ここにきて、ようやく目途が出てきた。以前は、エクオールは人によっては産生菌を持たない点を指摘された。

その後、我々はそういう人でも海洋深層水で作った豆腐や味噌を食べることで、腸内環境が改善することを確認した。今月6日に消費者庁に行き、最終的な確認を行なった。これを軸として新たな論文を作成し、届出を進めていく予定だ。2023年あたりの受理を目指している。

植田:小松社長はじめ室戸の民間企業では、取水開始から20年間以上たった今なお、研究・開発に取り組み、また新しいことに挑戦する想い、これは非常に大事な所だ。

海洋深層水には、まだまだ未解明なことが沢山ある。例えば、石油が世の中に出てきたのが160年前くらい。植物や海藻が何千年かけて腐ってできた真っ黒なものが、いろんな用途に役立てられている。

そんなことを考えると、産業化に向けてまだまだ一歩踏み出したばかりの海洋深層水は、非常に可能性のある資源ではないだろうか。

小松:今後の課題は、知名度。安定的な大量生産、大量販売を進めることで、室戸海洋深層水ブランドを作り上げていく。

当社も創業から20年が経ち、全国に取引先が増えてきた。まずは既存顧客をメインに、将来的には海外市場もターゲットに商流を拡大させていく。

もう一歩踏み込んだ研究開発をやって、地場産業の育成、最終的には、地域の雇用拡大までもっていきたい。そのためには、当然コストがかかる。民間企業は売上を増やしていきながら、市の方も様子を見ながら、(その支援を)考えて頂く、こういうスキームが必要となってくる。

植田:室戸の市民で海洋深層水を知らない人はいないが、全国的な知名度はまだまだ乏しい。まずは…

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