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拡大する「代替肉」市場、高まる健康志向が追い風(連載/話題追跡)

動物肉の代わりに植物由来の大豆ミートなどを使うプラントベースフードが世界的なトレンドとなっている。関心が寄せられる背景には、世界的な人口増加による食肉の需給バランスへの懸念や環境配慮などがある。プラントベースフードの商品開発は世界的規模で加速。近年の技術革新によって、保水性や肉粒感、繊維感、クリスピー感を表現することも可能にした。健康・栄養をテーマとした研究も進み、抗肥満・メタボ予防など、健康面での優位性を明らかにする動きも広がっている。

矢野経済研究所が発表した2020年の代替肉の世界市場規模は2,572億6,300万円。2020年以降は年間22%の平均成長率で推移し、2025年は6,732億1,900万円、2030年には1 兆8,723億2,000万円に到達すると試算した。

海外では先行のベンチャー企業によって市場形成が進み、昨今はグローバル企業の新規参入で競争が激化している。肥満が深刻化するアメリカでは、低カロリーや低脂質の訴求を打ち出したマーケティング手法が的中。新規ユーザーの獲得に成功している。

このトレンドは国内にも到来した。2019年度のプラントベースフード売上高は178億円で、2010年度の48億円から3.7倍に拡大。この2年の市場伸長率は130%強で、イギリス、ドイツに次ぐ3番目の伸長率となった。

日本人がもつ植物性タンパクのイメージの良さ、大豆に馴染みある食文化、アレルギーを持つ人の代替え需要、食事摂取基準改定によるたんぱく質摂取量の引き上げ、低脂質・低カロリーなヘルシー感といった要素をベースに、市場の裾野は急速に広がった。

今年は伊藤ハム、日本ハムなどの大手食品企業も新たに参入、市場拡大に追い風が吹く。不二製油グループでは粒状大豆たんぱくの製造工場を6月に竣工、今後の需要増を見据え供給体制を強化した。

プラントベースの代表格は大豆たんぱく。形状は粉末や粒状が流通している。近年の技術革新による素材の活用で、より本物に近い食感(硬さ、歯切れ、ふんわり感)を演出できるようなった。

日本では「植物性食品=健康に良い」といった概念をもつ人も多く、動物性食品を植物性食品に置き換えるプラントベース普及の下地はある。さらなる市場拡大を狙うには、一般的な日常食として普及させていくことが必要で、現在のコア層(比較的感度の高い人)以外の新規顧客層をいかに獲得するかがカギとなる。

TPCマーケティングリサーチ㈱の水上創氏は、「本物志向の強い日本人にとってプラントベースは“代替肉VS本物”の視点になりがち。日本人は節約志向と本物志向が強いため、価格以上の価値をいかに打ち出せるかがポイント」と指摘する。これをクリアするためにもプラントベースの価値をしっかり伝えていくことが必要で、その価値である「健康」と「環境」を明確に発信していくことが重要だ。

健康・栄養をテーマとしたエビデンスの蓄積も実際に進んでいる。大豆タンパク質は脂質の腸管吸収を抑制するという研究成果も発表されており、抗肥満・メタボ予防としての利用が有望視されている。このほか、整腸、ロコモ予防、免疫力向上、認知症予防、血圧調整をテーマとした研究も進められており、健康を訴求する新たな市場創出が期待されている。

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