(公財)日本健康・栄養食品協会(日健栄協会)は21日、熱中症の対処に使用することができる「個別評価型病者用食品 経口補水液」の普及を目的とした記者発表を都内で実施した。4月22日より、気象庁・環境省が実施する新たな取り組み「熱中症警告アラート」の運用開始に伴ったもの。
同協会理事長の矢島鉄也氏によると、「近年、熱中症による救急搬送が増加傾向にある」といい、総務省・消防庁が発表している救急搬送状況について、昨年、搬送人員は統計開始以降初となる10万人を超えたという。なかでも高齢者が多く、全体の57%が該当し、入院が必要な中度重症者は36%にも及ぶ。熱中症発生場所は住居が最も多く38%が該当している状況を説明した。また、熱中症による死亡者も年々増加しており、2024年の年間死亡者数は2,160人と2,000人を超えるなど歯止めが効かない状況に。現在国では死亡者数の半減を目標に掲げ、取り組みを進めているという。

その一つが経口補水液の活用だ。経口補水液は、塩分(ナトリウム、カリウム)と糖分(グルコース)をバランスよく組み合わせた液体飲料で、脱水症状時にこれらの電解質を効率良く吸収できる組成になっているのが特長。スポーツドリンクのように糖分が高すぎると利尿作用が促進され、脱水症状の改善には向かないという。経口補水液は、大塚製薬工場の『OS-1』を皮切りに、現在多くの食品・飲料メーカーが販売を行っており、ドラッグストアなどのPB品を含めるとかなりの数が流通している。一方で、経口補水液は病者用食品であるという認知がまだまだ低く、スポーツドリンクや清涼飲料水に「経口補水」と謳う商品も登場するなど、スポーツドリンクとの区別がつかない状況も。こうした背景から、国は2023年に特別用途食品制度を改正し、許可基準型病者用食品に「経口補水液」区分を新設。WHOが提唱する経口補水液の基準にならい、100 mlあたりナトリウム量を92~138 mg、カリウム59~98 mg、ブドウ糖1.00~2.60 g、浸透圧≤300 mOsm/lを定義した。

さらに昨年6月からは、 許可を得ていない製品の「経口補水液」名義での販売が禁止される新ルールが適用となった。ただし、許可基準型病者用食品については、感染症を原因とする下痢による脱水症状を改善するための補水療法であり、熱中症の対処として謳うことができない。矢島氏は「熱中症を要因とする脱水症状の改善を謳うには、別途臨床試験を行い、個別評価型病者用食品として申請し、認可を受ける必要がある」と説明。こうした分かりづらさを解消するために、「日健栄協では業界初となる熱中症や個別評価型病者用食品の経口補水液を紹介するリーフレットを作成した。熱中症対策には個別評価型病者用初期品のマークを目印に選択してほしい」とし、今後、関係団体と協力し普及啓発を図っていくという。
会見では、熱中症の専門家として日本医科大学大学院医学研究科教授で、同大学付属病院高度救命救急センター部長の横堀將司氏が登壇。熱中症予防の根底として「まずは暑熱環境からから避難すること。エアコンなどを使用し、体温を下げるなどの工夫も必要。さらに、適切な水分を適切なタイミングで摂取することが重要」と解説した。経口補水液の摂取タイミングについては、日本救急医学会熱中症診療ガイドラインで設定している「熱中症Ⅰ度」の症状が現れた際に飲用するのが適切とし、症状としては「めまい、立ちくらみ」「生あくび」「大量の発汗」「筋肉の硬直(こむら返り)」が目安という。同氏は「経口補水液は予防的に飲用するものではなく、症状が出た際に摂取するもの」とし、続けて「ガイドラインのⅡ度以上(頭痛、吐き気、集中力・判断力の低下)に該当する場合は、医療機関での診察が必要であり、自分で水分が摂れない場合は無理に飲ませずに点滴による対処をするように」と説明した。

日本医科大学付属病院高度救命救急センター部長 横堀將司氏









