統合医療

厚労省「統合医療」情報発信のあり方テーマに4回目会合

 厚労省医政局は先月5日、第4回「統合医療」のあり方に関する検討会(座長:(独)国立長寿医療研究センター総長・大島伸一氏)を開催した。統合医療に関する情報発信のあり方をテーマとしたが、議論は健康食品の表示や有効性の議論へと脱線。こうした患者不在の効果論争でなく、「患者のライフスタイルと心の状態を確認すべき」との意見が耳目を引いた。


 「統合医療」のあり方に関する検討会は今年 3 月に第 1 回会合が開かれ、今回が 4回目。第1回の初会合で、①統合医療の概念、②統合医療について現時点でどの程度の科学的知見が得られているか、③安全性・有効性についてどう評価したらよいか、④推進していくための取り組み、の 4 つの論点が示され、第 3 回目まででこの 4 つの論点ついて論点整理が出ているが、今回は特に「統合医療の情報発信のあり方」をテーマに会合が開かれ、参考人として早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構客員准教授の大野智氏が議論に加わった。
 冒頭、(独)国立健康・栄養研究所情報センター長の梅垣敬三氏による「健康食品の安全性・有効性情報データベースの紹介」、および参考人の大野氏による「がん医療現場における補完代替医療に関する情報発信の取り組み」が紹介された。これを受け、(社)日本医師会副会長の羽生田俊氏は、「補完代替医療は効くと考えるか否か」と質問。大野氏は「鍼灸や漢方など一部効果がある。マクロでは低いと考えるが、個々の判断でメリットを感じる人はゼロではない」と述べ、QOL改善での活用に言及。梅垣氏は「いい体感が出ている人もおり、否定はできない」とした。
 情報発信の議論の中では、慶應義塾大学医学部漢方医学センター副センター長の渡辺賢治氏が、「健康食品について患者に聞かれるが判断できない。我々(医師)の身近に専門家はいるのか」と質問。これに対し梅垣氏が「薬剤師、管理栄養士、NRを中心に、薬局や消費者センターにもいる」と語ったが、これを受けて大野氏は「情報のリソースだけを伝えても患者は判断できない。医師が噛み砕いて話さないと」と、医療者自身が情報を正しく把握する必要性を指摘した。
 ただ、統合医療の情報発信のあり方について、健康食品やトクホの表示についてのみの議論に話し合いは脱線、患者不在の議論が先行した。羽生田氏が「“血圧が高めの方に”という言葉は、どうみても効果がありますよということ。買う側が見たときにどう捉えるか。(中略)99%はメーカーの宣伝で購入している。医療の一部として語られるのには疑問がある」と独自の見解を主張。また、(梅垣氏に対し)「データベースをどれだけの人が見ているのか。ぱっと見てわかる工夫が必要」と注文をつけた。これに対し梅垣氏は「トクホは食品。生活習慣を改善する位置付けで、表示を正しく理解できるよう伝えるべき」とし、データベースについては「安全性を主眼に作った。ただ消費者は有効性を知りたがっている。これに対しては、有効性があるのかないのかを科学的視点で示すことも意味がある」と語った。
 こうした議論を受け、大阪大学大学院医学系研究科教授の伊藤壽記氏は「サプリメントが効く効かないという問題の前に、(患者の)ライフスタイルと心の状態を確認するべきで、単独で効かないという判断は時期尚早」とし、「医薬品と近い状態で試験すれば有効なものも出てくる可能性がある」と強調した。
 このほか、近代西洋医学と組み合わせる療法の分類や例について、「食事療法や温熱療法、温泉療法、漢方医学など、近代西洋医学ですでに実績のあるものに絞るべき」「WHOなど海外で認められているものも含まれており、分からないものを全て消すのではなく、広く意見を聞く必要があるのでは」など延々と議論が続いた。
 結びとして、大島氏は「医療という言葉でどこまで許容できるかの議論に尽きる」とし、「統合医療が課題となる理由は、時代の分岐点にきているから。近代科学に代わる方法論が見えてくれば。そうした期待をもって議論を重ねていきたい」と結んだ。

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