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ZOOM UP 【プレバイオティクス】“Gut Health”トレンドで脚光

世界中で健康増進の関心が高まるなか、近年注目を集めているのが“腸内フローラ”。海外では腸の健康を意味する“Gut Health”としてここ数年のトレンドになるなど、日本のみならず海外でも腸内環境の改善は共通の健康課題となっている。特に欧米では食物繊維をはじめとしたプレバイオティクスが腸内環境の改善に有効であるとして、β-グルカンやイヌリンなどの利用が進む。一方国内では、乳酸菌やビフィズス菌の意識的な摂取が進み、乳酸菌ブームが先行したが、最近では腸内環境に与える影響からプレバイオティクスの重要度が再評価されつつある。生きた乳酸菌やビフィズス菌と組み合わせた“シンバイオティクス”としての提案も活発化するなど、今後さらなる需要の拡大が見込まれる。

■“腸内細菌のエサ”となるプレバイオティクス

腸内の有用菌増殖を促進する物質を意味するプレバイオティクス。イギリスの食品生物学者ギブソンらによって1994年に提唱された概念で、「腸内フローラの中で宿主に有益な作用をもたらす有用菌にのみ、選択的に利用される難消化性物質」と定義している。言い換えれば「腸内細菌のエサとなり、腸内環境を改善する食品成分」だ。プレバイオティクスを代表するのがβ-グルカンやイヌリンをはじめとした食物繊維やオリゴ糖。プレバイオティクス素材の摂取により、酪酸やプロピオン酸、コハク酸といった短鎖脂肪酸の産生が促進することが研究によりわかってきている。

短鎖脂肪酸は腸内を適度な酸性に保ち、悪玉菌の増殖を抑制、善玉菌を優位にすることから、腸内環境を良好に維持するための必須栄養素といえる。しかし現代人においては、肉食中心やファーストフードが定着したことで食物繊維の摂取不足は年々深刻に。食生活の変化や乱れにより腸内細菌叢も大きく変わってきているという。

近年、次世代シーケンサーなど最先端の研究技術が進んだことで腸内細菌についてさまざまなことがわかってきた。慶應義塾大学先端生命科学研究所准教授でメタジェン代表取締役社長CEOの福田真嗣氏は、「腸内細菌叢は環境要因に大きく左右される。特に長期的な食習慣に依存する」と指摘する。

約1,000種が存在するといわれる腸内細菌は個人個人でその菌バランスが異なっており、パターンを解析することで疾病との相関リスクについてもわかってきたという。食物繊維が不足すると、ある種の腸内細菌が腸管の粘液層を分解し、腸管感染症に対する抵抗性を弱めるといい、大腸炎などの疾患につながる。

大腸疾患に詳しい松生クリニック院長の松生恒夫氏も「食生活の大きな変化や、体内リズムの乱れ、ストレス、運動不足によって、腸内環境が悪化する」と指摘する。悪化が続くと、「大腸では腸内に老廃物がたまり、腸内細菌のバランスが崩れて免疫低下を起こし、小腸では腸管免疫の主役となるパイエル板のリンパ球のはたらきが弱まり免疫力の低下を引き起こす」とも。

大腸がんをはじめとしたがん疾患のほか、感染症、花粉症や食物アレルギーなど免疫異常に係わる疾患リスクも高まることから、プレバイオティクスの積極的な摂取が重要とされている。

■国内外でプレバイオの需要高まる機能性表示食品は300品超え

一昨年、米国FDAが食物繊維に関するガイダンスを公表、改定した。食物繊維としてエビデンスに基づき生理効果が認められるとされる成分8 種が栄養成分(Nutrition Fact)及び、サプリメント成(Supplement Fact)表示で食物繊維の含有量を正確に明記することができるようになった。

制定されたのは「植物細胞壁繊維混合物(サトウキビ繊維、リンゴ繊維等を含む広範な区分)」、「アラビノキシラン」、「アルギン酸塩」、「イヌリン及びイヌリン型フルクタン」、「高アミロースデンプン(難消化性デンプン2 )」、「ガラクトトオリゴ糖」、「ポリデキストロース及び難消化性マルトデキストリン/デキストリン」。

海外の展示会では、これら素材を「エビデンスに基づいたFiber」としてP Rするメーカーが増加しているようだ。国内でも機能性表示食品では難消化性デキストリン、葛の花イソフラボン、大麦β-グルカン、イヌリン、オリゴ糖などが対応素材となっており、なかでも難消化性デキストリンは、その扱いやすさから300品近い受理数で、関与成分別でトップに。食物繊維はいまや世界的にニーズの高い食品素材となっており、市場拡大に大きな期待が寄せられている。

 

本記事の続きは「健康産業新聞1683号」に掲載。「健康産業新聞」(月2回発行/1号あたりの平均紙面数は約50頁)定期購読のお申し込みはこちら

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