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疾患の原因となる炎症、その抑制とDHA・EPAの関連などについて講演―第21回DHA・EPA公開講演会

DHA・EPA協議会では毎年「公開講演会」を開催しており、本年は10月23日に第21回「オメガ3脂肪酸の疾患への応用」を開催した。講演会では3名の講師により、オメガ3脂肪酸、魚油などに関する話題と情報が披露された。新たな機能を持ったオメガ3脂肪酸、血管疾患に対する魚油の効果、食後高脂血症に関する現状と魚油とのかかわりなど、盛り沢山の内容であった。

■お腹の調子を整える新規ω3脂肪酸の発見
東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 放射線動物科学教室
准教授 村田幸久

体内で起こる炎症反応は、風邪やケガから、アレルギー、がん、脳梗塞まで様々な疾患に繋がってしまう。炎症を制御しているのが脂肪酸であり、著しくQOLを低下させることで問題となっている腸炎に関し、腸炎に有効な脂肪酸の探索を試みた。

体内で産生される脂肪酸とその代謝産物を網羅的に濃度測定する「リピドーム」という技術を用いて、腸炎モデルマウスを使った試験を行った。そこで、EPAがエポキシ化した5,6-DiHETE(ダイヒート)という脂質が、炎症が直ってくると出てくることが分かった。5,6-DiHETEは、TRPV4をブロックすることで炎症を抑制するという。さらに5,6-DiHETEはアナフィラキシーの抑制にも作用するという。その他にもお腹の調子を整えるオメガ3代謝物を発見していると語った。

■脂質代謝異常を伴う血管疾患に対する魚油の効果とその作用機序
近畿大学 農学部 応用生命化学科 応用細胞生物学研究室
准教授 財満信宏

EPA・DHAは冠動脈疾患の発症率を20%低下させることが分かっている。ならば、残りの80%にはなぜ効かないのか? コレステロールだけではなく、中性脂肪も血管狭窄に関与することが分かった⇒中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)

破裂しやすい腹部大動脈瘤(AAA)では脂肪細胞がみられるが、破裂しにくい膝窩動脈瘤(PAA)では脂肪細胞はみられない。脂肪細胞が出現した血管は脆弱化するため、AAA壁に脂肪細胞が出現して破裂することが考えられる。モデル動物を使った試験では魚油を投与することでAAAの進展と破裂を抑制することが分かっている。魚油の摂取は血管疾患に予防的に働くと考えられるという。

■魚油研究の温故知新~熱産生亢進と食後高脂血症改善
東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科 生理機能学研究室
教授 高橋信之

ヒトの脂肪細胞は3種類ある⇒白色脂肪細胞、ベージュ脂肪細胞、褐色脂肪細胞
うち、褐色脂肪細胞は熱産生を行う。いままでヒト成人には存在しないと思われていたが、存在することが証明された。しかし、加齢や肥満で褐色脂肪細胞は活性化されなくなる。肥大化脂肪細胞が褐色脂肪細胞の脂肪燃焼を阻害するため。なお、魚油は褐色脂肪細胞を活性化してエネルギー消費を増加させることが分かっている。

空腹時よりも食後の高脂血症の方が動脈硬化を発症する率が高い。食後高脂血症は高脂肪食により誘導される。ところが、高脂肪食にDHAを配合した場合、食後高脂血症が抑制されることが分かった。

DHA・EPA協議会についてはこちら⇒ http://www.dhaepa.org/
なお、本講演会の講師陣による原稿を「食品と開発」2月号(2月1日発行)に掲載予定です。発行まで今しばらくお待ちください。

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