DHA・EPA協議会、(一財)日本水産油脂協会は、10月23日に都内(およびZoomライブ配信)にて、第26回公開講演会『DHA・EPAの筋肉組織への作用と効果』を開催した。講演会では、筋肉組織に対してDHA・EPAが及ぼす影響などについて、最新の研究データが発表された。(以下、講演会の発表より内容抜粋)
「多価不飽和脂肪酸が担う平滑筋収縮の即時的な調節機構」
東邦大学 薬学部 薬理学教室 准教授 小原圭将氏
n-3系多価不飽和脂肪酸(以下n-3系PUFA)の長期摂取は、平滑筋(血管や内臓の壁に存在)関連疾患に対する予防改善効果を発揮することが知られているが、即時的な平滑筋収縮抑制効果があることが新たに確認された。それにより、平滑筋関連疾患に対する予防・治療に繋がる可能性が示された。
・DHAなどのn-3系PUFAとγ-リノレン酸は平滑筋の収縮に関与するプロスタノイドTP受容体を遮断することで、プロスタノイドによる平滑筋収縮を抑制する。
・α-リノレン酸はカリウムチャネルを開口することで、脳血管収縮を抑制することが判明した。
・動物試験においてDHAがブラジキニンなどによる胃底平滑筋の収縮反応を抑制することを明らかにした。
「多価不飽和脂肪酸の心筋保護作用と心房細動予防に及ぼす影響の解析」
近畿大学 農学部 食品栄養学科 公衆栄養学研究室 准教授 森島真幸氏
心房細動(不整脈)は健康寿命の延伸を大きく阻害する要因であり、心房細動が脳梗塞を引き起こす可能性も危惧されている。心房細動の予防に効果的な食品成分は同定されていないが、脂肪酸の質を整えることで予防できると考え、多価不飽和脂肪酸に着目した。
EPAが心筋細胞に及ぼす作用について、EPAはFFAR4(遊離脂肪酸受容体)を介する経路で細胞内Ca2+濃度の制御に関わるL型Ca2+チャネルの発現を正常化させることが分かった。さらに、受容体を介さずに細胞内へ入り細胞内の活性酸素種の産生を抑制してL型Ca2+チャネルの発現を是正する経路が存在することも明らかにされた。
高脂肪食マウスの試験では、EPAと高脂肪食の同時摂取により、心房での炎症や繊維化が正常化されることが判明。EPAの摂取により心電図のP波幅(右心房から左心房への興奮電動時間)が改善されたことから、心房細動を予防できる可能性も見いだされた。
「リン脂質に結合するアシル基分子種と骨格筋機能」
静岡県立大学 食品栄養科学部 教授 三浦進司氏
生体膜の構成成分であるリン脂質の質「リン脂質クオリティ」の変化に着目。リン脂質に結合するアシル基の種類や組み合わせがリン脂質の多様性に繋がっており、骨格筋の性質・機能の変化に伴い、リン脂質クオリティも変化することが示されている。
細胞膜の脂質、とくにその大部分を占めるPC(ホスファチジルコリン)のアシル基が骨格筋機能維持に果たす役割は大きい。速筋と遅筋ではリン脂質クオリティが異なり、速筋のリン脂質にはパルミチン酸(C16:0)が多く、遅筋ではステアリン酸(C18:0)が多く結合している。持久系トレーニングによる後天的遅筋化では、16:0-PCは減少し、18:0-PCが著しく増加した。
骨格筋のリン脂質クオリティは筋委縮によっても変化する。筋委縮モデルマウスの試験では、委縮骨格筋において22:6-PC(DHA含有PC)の減少と18:2-PC(リノール酸含有PC)の増加がみられた。リン脂質クオリティの制御が骨格筋において重要な役割を果たすことが示唆されており、22:6(DHA)のリン脂質は骨格筋機能に重要であることも示された。
※DHA・EPA協議会ホームページ https://www.dhaepa.org/
※月刊『食品と開発』2026年2月号(2月1日発刊)では、本講演会の演者による執筆原稿の掲載を予定している。
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