執筆者
弁理士法人ナビジョン国際特許事務所 顧問弁理士 春名 真徳
吸収性コントロールに関する用途発明
本知財連載の2019年3月号(Vol.54 No.3)では、「有効成分の吸収促進に関する用途発明」をテーマとし、従来のように特定の機能性自体(例えば脳機能や運動機能など)を高めるための用途発明ではなく、既知の有効成分の吸収性を高めることで間接的に機能性向上を図る発明群に着目した。
当時は、ルテインやアントシアニンの吸収を肝油類によって高める株式会社えがおの出願(特開2018-93846)をはじめ、にんにく卵黄によるS-アリルシステインおよびアリインの吸収促進(特許第6154939号:株式会社健康家族)、ホタテ貝外套膜のパパイン分解物による脂質吸収促進(特許第6418579 号:北海道大学ほか)、さらにサポナリンによるカルシウム吸収促進(特許第6399419号:株式会社東洋新薬)など、多様な吸収促進メカニズムと評価系(Caco-2細胞モデルなど)を活用した用途発明の具体例を紹介した。
これらの事例からは、吸収促進を切り口とした用途発明が、(1)アピール(例:「ルテインの吸収率アップ」等)に繋がる知財戦略上の価値を有し、(2)公知成分の機能性向上の観点だけでない新たな特許権を確保できる可能性を示した点を示した。
本号では、このテーマを再び取り上げ、近年の出願・権利化事例にみる吸収促進技術の進化と戦略的活用を整理する。また、吸収促進型用途発明だけに留まらず、現在どのような形で吸収性コントロール技術が深化・多様化しているのか、その権利化の潮流を改めて検証したい。
成立特許事例
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