執筆者
キッコーマン㈱ 研究開発本部 中島 文子
はじめに
栄養課題は、個人の健康のみならず、社会全体の持続可能性にも深くかかわる重要な社会課題である。現代においては、低栄養(やせ、発育障害、貧血、微量栄養素不足など)と過栄養(肥満、生活習慣病など)が同時に存在する「栄養不良の二重負荷」が世界的な課題となっている。これらの課題は、食環境の変化、経済格差、食習慣の多様化など、様々な要因によって引き起こされており、国や地域によってその様相は異なる。
なかでも、ナトリウムの過剰摂取は高血圧や心疾患、脳血管疾患、慢性腎臓病といった非感染性疾患のリスクを高め、食事に関連する死亡リスクのうち、最大のリスク要因である。ナトリウムの過剰摂取に起因する死亡数は年間189万人と推定されている。国連の定める持続可能な開発目標(SDGs)の一つに「目標3:すべての人に健康と福祉を」があるが、その中においても、非感染性疾患による死亡率を予防や治療を通じて減少させることが盛り込まれている。食塩摂取量を削減していくことがこの目標達成の近道の一つであり、減塩は世界全体で積極的に取り組んでいかねばならない課題である。
弊社でも食に携わる企業の責務として栄養課題の解決に向き合っており、本稿では、弊社が行ったしょうゆ由来の食塩摂取量の調査結果の一端と、しょうゆの節塩効果に関する研究について紹介する。
1.食塩摂取の実態
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