(一社)高機能玄米協会は6月27日、都内で第17回会員総会を開催した。歴史的な米価高騰の最中、リアルな市場動向を反映した「玄米食白書2025」の制作・発表が承認されたほか、農林水産省からは国の米政策が「増産」へと大きく舵を切ったことが示され、玄米市場の今後の方向性を探る重要な会合となった。

総会ではまず、主要議案として「玄米食白書2025」の制作が承認された。本白書は、会員の販促資料としての活用や、食の現場のリアルな声を届けることを目的とする。白書によると、玄米市場は約810億円、雑穀等を加えた健康米市場全体では約970億円に達すると推計される。また、500人の女性を対象とした意識調査では、玄米の喫食経験者は6割を超えるものの、週1回以上の定期喫食者は12.6%にとどまる実態が明らかになった。食べない理由として「炊飯・調理が面倒」「食べる機会がない」が上位に挙がっており、外食や中食での提供に商機があることが示唆された。本白書の発表に伴い、7月29日には東京・銀座で記者発表会が開催される予定だ。

次に、基幹品種「金のいぶき」については、2年続く異常高温で品質と収量が低下し、来年度の作付面積が大幅に縮小する見込みで「まさに正念場」との厳しい状況が報告された。対策として、栽培時の弱点を克服した後継品種「東北胚232号」の早期活用や、バリューチェーンの再構築を急ぐ方針が示された。
総会後には、農林水産省の武田裕紀農産企画課長が講演。25年ぶりに改正された食料農業農村基本法に基づき、2030年度の米の生産目標を「818万トン」と設定し、国として初めて「増産」を明確に掲げたと強調した。
「令和のコメ騒動」と称される昨今の米価高騰については、流通構造の変化が主因との分析を提示。これに対し政府は、集荷業者向けの「買戻し条件付売渡し」に加え、小売店等へ直接安価に供給する「随意契約による売渡し」の2段構えで対応し、米の平均販売価格が4週連続で低下したと報告した。今後の見通しとして、令和7年産米は生産量が40万トン増の719万トンを見込むとした。また、海外での日本産米の人気は高く、輸出量は5年で2.6倍に増加しており、2030年には35万トンの目標を掲げるとした。
今回の総会は、玄米の価値を再定義し情報発信を強化しようとする協会の意志と、国の米政策の歴史的な転換点が示された場となった。消費者調査で明らかになった「調理の手間」という課題に対し、中食・外食でのメニュー展開等を進めるとともに、国の増産・輸出拡大方針と連携し、玄米を日本の食料安全保障や農業の持続可能性に貢献する「戦略的食材」へと昇華させられるか、今後の取り組みが注目される。