近畿⼤学薬学総合研究所 教授 森川敏⽣氏と、オリザ油化研究開発本部⻑ 下⽥博司氏らの研究グループは、⽶糠から油を抽出する際の副産物から脂質である「アシル化グルコシルセラミド」の新規化合物3種を世界で初めて発⾒し、その化学構造を明らかにした。さらに、そのうちの1種が⾓層のバリア機能を⾼めることを、ヒト表⽪を再現した組織モデルを⽤いて明らかにした。本研究論文は11月26日に天然物に関する専⾨紙“Phytochemistry Letters(ファイトケミストリー レターズ)”にオンライン掲載された。
研究グループは、機能がまだ解明されていない「アシル化グルコシルセラミド」という脂質に着⽬し、⽶糠の副産物から新たに3種類を単離して、その化学構造を明らかにした。いずれも新規の化合物であり、⽶の学名Oryza sativaに因んで「oryzaceramide A」、「oryzaceramide B」、「oryzaceramide C」と命名された。
ヒトの表⽪を再現した組織モデルを⽤いて、oryzaceramides A〜Cが⽪膚から蒸発する⽔分量に及ぼす影響を評価した結果、oryzaceramide Aが有意に⽪膚から蒸発する⽔分量を減少させ、⾓層のバリア機能を⾼めることが⽰唆された。
【研究の詳細】
⽶糠抽出物をクロマトグラフィーによって分画し、3種類の未知化合物(oryzaceramides A〜C)を単離。NMRや質量分析などの分光学的⼿法に化学的処理を組み合わせることで、それぞれの⽴体構造を詳細に解析した。その結果、これらの化合物は従来の植物由来グルコシルセラミドとは異なり、脂肪酸がアシル化された新しい構造を持つことが明らかになり、それぞれ脂肪酸のうちパルミチン酸(oryzaceramide A)、オレイン酸(oryzaceramide B)、リノール酸(oryzaceramide C)が結合していることがわかった。
次に、単離した化合物の⽣理活性を評価するため、ヒト表⽪三次元培養モデルを⽤いて⾓層バリア機能への影響を調べた。その結果、oryzaceramide Aを10μMの濃度で添加すると、経表⽪⽔分蒸散量が有意に減少し、⾓層バリア機能が改善することが明らかになった。また、この作⽤には、グルコシルセラミドに付加したアシル基、特に飽和脂肪酸エステル部分が関与している可能性が⽰唆された。
これらの結果から、⽶糠にはこれまで知られていなかったアシル化グルコシルセラミドが存在し、それらが⽪膚の保湿・バリア機能を⾼める可能性が⽰唆された。本研究成果によって⽶糠の副産物から得られる新しい脂質の機能性が明らかになり、その機能性のさらなる解明により化粧品や機能性⾷品への応⽤も期待されている。
【論⽂掲載】
掲載誌︓Phytochemistry Letters
論⽂名︓Oryzaceramides A–C, acylated glucosylceramides with epidermal barrier functio
ns, isolated from rice bran
(⽶糠から単離された、⽪膚バリア機能をもつアシル化グルコシルセラミドであるoryzaceramides A-C)
著者︓⽵⽥翔伍1、下⽥博司1、⽶⽥朱⾥1、萬瀬貴昭2、森川敏⽣2,3* *責任著者
所属︓1 オリザ油化株式会社、2 近畿⼤学薬学総合研究所、3 近畿⼤学アンチエイジングセンター
U R L︓https://doi.org/10.1016/j.phytol.2025.104086
D O I︓10.1016/j.phytol.2025.104086













