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機能性食品開発の現状と新展開をテーマに

ファンクショナルフード学会は2月8日、9日の2日間、東京都千代田区の城西大学東京紀尾井町キャンパスで「第21回ファンクショナルフード学会学術集会」を開催した。今回のテーマは「機能性食品開発の現状と新展開」。大会長の城西大学薬学部医療栄養学科の和田政裕氏は冒頭の挨拶で「食品機能の新しいデータを発表する場として、どのように研究が進んでいるのか交流の場として活発な議論をしていただきたい」と述べ、様々な角度からの研究成果が演題に盛り込まれ、若手研究者からの講演発表も行われた。

初日は特別講演3題が披露された。城西大学薬学部薬科学科の片倉賢紀氏は「機能性食品としての多価不飽和脂肪酸の現状と今後の可能性」と題して講演。多価不飽和脂肪酸およびその代謝物による神経幹細胞の分化制御機構と、モデルラットを用いた腎不全の予防・進行抑制効果について紹介した。DHAは認知機能、EPAにはうつ病に効果があることが報告されており、海馬でニューロンがどれだけ増えたかを確認すべく、神経幹細胞を用いた試験を実施し、細胞内のシグナル伝達が ω-3多価不飽和脂肪酸誘導性神経発生に関与している旨を概説した。また慢性腎不全を予防する可能性があるメカニズムの1つとして、DHA を含む食事が腎臓の酸化ストレスと線維化の両方に影響を及ぼし、腎不全の進行を抑制できるとした。DHA/EPAの供給源となる世界的な漁獲量の減少についても触れ、代替脂資源の確保の必要性についても述べた。

東京農工大学大学院生命工学専攻の稲田全規氏は「力学的負荷に相関した筋量制御に関わる遺伝子発現解析」と題し、宇宙飼育、廃用性非加重(筋萎縮)モデル,遠心加重飼育装置を用いた異なる力学的負荷マウスを対象とした検討を行い,解析結果について詳説した。廃用性非加重は遅筋・速筋ともに骨格筋を量的に負に制御する一方,遠心飼育による慢性的な2 g 力学的負荷は正に制御することが明らかとなり、筋萎縮性遺伝子の変動については遅筋のみで相加的な因子として,筋形成系やアポトーシス,ミトコンドリア,血管新生などの遺伝子,細胞外マトリクスといった経路に関連する遺伝子が変動することが示された。現在,機能性因子の適用に向けたスクリーニングを進めている。

城西大学薬学部薬科学科の鈴木龍一郎氏は「グリケーション阻害活性を有する天然素材コーンシルクの機能性成分について」と題して講演。コーンシルク水抽出エキス中のグリケーション阻害活性成分を各種分析装置を用いて詳細に構造解析した結果、lignocellulose を同定した。また,コーンシルクを機能性素材として利用するために必要となる品質評価法設定を目的に、FT-IR とケモメトリクスを組み合わせた手法の検討した内容を詳説した。講演の最後に天然素材と機能性原料を扱う際にはメーカーや産地によって活性が異なることを確認することが大切である旨を述べ締めくくった。

2日目のランチョンセミナーでは、(公財)東洋食品研究所・新谷知也氏が「グルコサミンの新しい機能性と社会実装」と題して講演した。同氏は、グルコサミンのオートファジーの誘導を介した寿命延長や腸内環境に対する影響など、これまでの研究成果を紹介した。グルコサミン摂取により、酪酸菌Anaerostipesが増加し、長寿に寄与する可能性があると言及。グルコサミンサプリメントを使用した便通改善を目的とした臨床研究を開始することを報告した。今後、腸内細菌叢改善を目的としたランダム化試験も計画中だという。さらに、米国国立老化研究所が実施するアンチエイジング物質の検証プログラムに採択され、米国3施設でグルコサミンの長期投与試験を実施するという。同氏は、社会実装に向けて、「エビデンスを積み重ねて、オートファジー認証マークの活用や新たなヘルスクレームの機能性表示食品開発に繋げたい。もっとグルコサミンが注目される素材になって欲しい」と述べた。

一般演題では、「キチン、キトサンを利用した紅茶抽出液におけるタンニンの低減」(東京工科大学応用生物学部食品コース・清水玲那氏ほか)、「マイクロプラスチックの体外排泄作用を有する機能性食品素材の探索」(東海大学大学院総合理工学研究科・劉笛氏ほか)、「グルコサミンによる認知症の発症リスク低減作用:文献的検討」(人間総合科学大学・蒲原聖可氏)など、様々な角度からの研究成果が演題に盛り込まれ、若手研究者からの講演発表も行われた。

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