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DHA・EPAの代謝産物に関する機能研究を紹介―DHA・EPA協議会 第20回公開講演会

DHA・EPA協議会と(一財)日本水産油脂協会が主催する、第20回公開講演会「DHA・EPAとその代謝産物の機能研究の進展」が24日(水)に都内で開催された。

まず主催者代表としてDHA・EPA協議会 会長の昌子 有氏が挨拶。20回目の講演会であること、研究が進み、DHA・EPAが全てのライフステージにおいて重要であることが知られてきたこと、健康維持や疾病の治療でのDHA・EPAへの期待が語られた。

●富山大学 医学部 公衆衛生学講座 准教授 浜崎 景氏
「メンタルヘルスにおけるDHA・EPAの役割」
ω3と抑うつの背景を解説しながら、大学生、妊婦、中高年それぞれにおいて、魚食(あるいはω3摂取)と抑うつの関連について調査したデータを紹介。

大学生4000名を対象とした試験では、月に1~2回魚を食べる人では抑うつになる率を22%抑制、毎日食べる人では35%抑制したと紹介。最近の若い年代層では魚食が減少傾向にあることが危惧された。

妊婦においては、妊娠期にω3が足りないと母体の脳にあるω3が使われること、出産後には出産前と比べて脳の容積が減少すること、減少が元に戻るのに2年ほどかかることなどを紹介。妊娠前期と妊娠中後期、出産1か月後で比較した10万人規模の試験では、魚食およびω3摂取と抑うつの関連は、妊娠前期よりも中後期で強かった。これは出産に近づくにつれω3の需要が高まるからと予想された。また、ω3より魚食で関連性が強く出たのは、魚の方がω3以外にもビタミンDやセレニウムなどが含まれていることが関連するのではと推測された。

●京都大学大学院農学研究科 応用生命科学専攻 応用微生物学講座 准教授 岸野 重信氏
「腸内細菌の脂質代謝と不飽和脂肪酸代謝産物に関する生理機能について」
油脂は三大栄養素の一つとして体内で活用されるが、吸収されなかった油について、大腸を通過する際に腸内細菌がどうかかわるか、どんな代謝が行われるかなどについて解説。

摂取した不飽和脂肪酸が大腸を通過する際に腸内細菌によってどのように代謝されるかに注目して解析を行った結果、様々な新規代謝物が見いだされた。リノール酸やα-リノレン酸は、乳酸菌の代謝によって複数の水酸化脂肪酸やオキソ脂肪酸、共役脂肪酸などが産生される。

これらの代謝産物について生理機能を調べたところ、腸管バリア機能制御、脂肪酸合成制御、腸管免疫制御、炎症抑制作用、HDL産生促進作用などが確認された。これらの結果から、腸内細菌による有用な代謝産物が、宿主であるヒトの健康に何らかの影響を与えていると考えられた。そこで、代謝産物を直接摂取することで恩恵にあずかるという新たな概念「ポストバイオティクス」を紹介した。

●お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 教授 小林 哲幸氏
「ω3脂肪酸による炎症・アレルギーの制御~最近のトピックス」
脂質の三大機能は、生体膜成分、シグナル分子、エネルギー源であり、生体内のω6とω3のバランスが重要であると説明。ω3の生理作用のなかでも、特に抗アレルギー・炎症の抑制について実際の例を挙げながら解説。

重症アトピー・ぜんそく患者(高校生・中学生)に、ω6/ω3比を下げる食事指導を行った結果、皮膚炎面積・重症度スコアの改善などアトピー性皮膚炎の改善がみられた。また、出血性ショックモデルラットを用いたω3およびω6脂肪乳剤の動脈内投与では、ω3脂肪乳剤を摂取した際のω3代謝物が循環動態改善や抗炎症作用に関与する事などが語られた。

DHA・EPA協議会についてはこちらをご覧ください。
http://www.dhaepa.org

なお、講演会の先生方によるご講演に関連したご執筆原稿を、「食品と開発」の来年2月号(2月1日発行)に掲載予定です。ご期待ください。

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