林原が事務局を務めるヘスペリジン研究会は、11月15日にオンラインにて「第13回研究発表会」を開催した。今回は「健康寿命延伸」に関する3題の講演が行われた。ゼブラフィッシュを不安モデルとして使った試験、糖転移ヘスペリジンの運動能力への影響をみた試験、パーキンソン病にヘスペリジンがどのように役立つか、といった内容が紹介された。
「最新ヘスペリジン研究トピックス紹介~健康寿命延伸への挑戦~」
■講演1
ゲノム編集による不安モデル ゼブラフィッシュの作出とヘスペリジン研究への応用
塩﨑一弘(鹿児島大学 水産学部食品生命科学分野 准教授)
不安を感じるとそれを抑制するために出てくるホルモンである「神経ペプチドY」を欠損させたゼブラフィッシュは、ヒトのうつ病や不安障害の動物モデルとして有用で、このモデルを用いて漢方薬や機能性物質の抗不安作用の評価を行っている。グルコシルヘスペリジン(以下GH)添加飼料を使って不安抑制効果を評価したところ、不安行動の減少および、興味探索行動を促進することを確認した。それは経口摂取で効果を発揮し、水槽の水に添加してエラから摂取される場合には効果が得られなかった。
■講演2
糖転移ヘスペリジンの摂取は低強度で長時間に及ぶ走行パフォーマンスを向上させる
大森 肇(筑波大学 体育系健康体力学分野運動生化学領域 教授)
GHの継続摂取が有酸素運動能力を向上させるか、ラットを使った試験で、低強度と高強度の走行能力に対するGHの影響を調べた。すると、低強度運動群においてGH摂取で運動時間の延長が認められたことから、継続的なGH摂取で、低強度運動における有酸素運動能力の向上効果が考えられた。GH摂取により脂肪酸代謝経路においてβ酸化の亢進が推定され、エネルギー産生量が増加することで、有酸素運動能力が向上したと考えられた。
■講演3
フラボノイドとパーキンソン病治療法開発
馬場孝輔(富山大学 学術研究部医学系脳神経内科/大阪大学大学院 医学系研究科神経内科学 准教授)
パーキンソン病の進行を抑制する薬は開発されていない。フラボノイドは神経疾患への可能性が示されており、GHによる治療の可能性を探った。パーキンソン病発症のカギを握ると考えられているαシヌクレインについて、GHは高い凝集阻害能を示した。パーキンソン病モデルマウスを使い、GH1%含有飼料の自由摂取によりパーキンソン病の発症抑制が示唆された。脳内でGHがシヌクレイン凝集をブロックすることが考えられ、治療薬としての可能性が示唆された。