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「ファンクショナルフードは老化を制御できるか?」をテーマに

ファンクショナルフード学会は、1月6日、7日の2日間、愛知県名古屋市(会場:ウインクあいち)で第19回学術集会を開催した。「ファンクショナルフードは老化を制御できるか?」をテーマに、抗老化に関わる炎症抑制など作用メカニズムの解明に関する研究成果を中心とした演題が盛り込まれ、若手研究者からの講演発表も行われた。ハイブリット式で行われ、現地、オンラインあわせて約80人が参加した。

初日の基調講演では国立長寿医療センター研究所の丸山光生氏は、「ジェロサイエンスとファンクショナルフードの接点、炎症抑制と栄養管理」と題して講演。これまで様々な生物で進められてきた寿命や老化研究の流れを紹介するとともに、寿命遺伝子の発見や老化のメカニズムから紐解いたエビデンスをヒトの老年医学により近づけるものとして位置づけるジェロサイエンス研究について概説した。また、ファンクショナルフードによる炎症抑制と栄養管理の一例として、プレバイオティクスとして乳酸菌株(KW3110)を老化モデルマウスに長期摂餌させ、腸内細菌叢の変化や加齢に伴う腸の炎症抑制、血中のサイトカイン量の抑制の有無を解析し、老化に伴い生体内に生じる細胞老化、炎症性サイトカインの産生とそれを制御する腸管、全身における生体防御系を検討した結果、老化の進行が遅くなることを確認した旨を述べた。

長崎大学医学部・大学院医歯薬学総合研究所病理理学分野の下川功教授は「カロリー制限による老化制御機構」について講演。寿命遺伝子の多くは、エネルギー摂取状況のセンシングと代謝制御に関与しており、特にGH-IGF-1シグナル系を抑制した遺伝子変異は、一貫して実験動物の寿命を延伸する。IGF-1系を抑制した遺伝子改変ラットを用いた試験区の解析では、自由摂食環境下でも寿命延伸、腫瘍抑制、ストレス耐性を含むDR(Desmoplastic Reaction:間質線維化反応)の特性を示し、DRの効果は、飢餓に対する神経内分泌系の適応機構に起因するとの見解を述べた。DRによって促進されるミトコンドリアの呼吸鎖スーパーコンプレックスの形成や膜電位の制御にFoxO3が関与し、酸化ストレスや炎症を抑制する可能性、視床下部に発現し摂食やエネルギー代謝を制御するNeuropeptide(Npy)に着目した試験結果など一連の研究から、DRによる哺乳類の老化制御機構は、視床下部、循環血中ホルモン、末梢組織・細胞の3つの階層が連環したモデルであるとし、この恒常性の破綻が老化や関連疾患の発症を促進すると考えられる、とした。

このほか、富山大学学術研究部医学系分子医科薬理学の中川崇教授は「NAD代謝を標的とした抗老化」をテーマに、NAD代謝の概略を解説するとともにNADの前駆体であるNMNを用いたNAD代謝の活性化による抗老化作用について講演。韓国の化粧品メーカーアモーレパシフィック R&Iセンターのキム・ジュオン氏は、アミノ酸トレオニンが食事制限を行うのと同様の働きをして、健康寿命を延ばすといった最新の研究成果を披露した。

2日目の大会長講演では、国立長寿医療研究センター老化ストレス応答研究プロジェクトチームの清水孝彦氏が、「臓器老化モデルマウスを用いたファンクショナルフードの機能性解析」と題して講演を行った。同氏は、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の減少が老化に伴う病気の一因であると強調。SOD1欠損マウス表現型を改善した機能性食品として、ビタミンC(骨量改善、皮膚厚改善)、レスベラトロール(皮膚厚改善)、コラーゲンペプチド(皮膚厚改善)、高麗人参の実抽出物・シリンガレシノール(皮膚厚改善)、白金ナノコロイド(皮膚厚改善)などを挙げた。同氏は「ファンクショナルフードを賢く利用して老化を制御し、健康寿命の延伸に繋がればと思う」と述べた。

一般演題では、神奈川歯科大学大学院統合医療学講座の蒲原聖可氏が「COVID-19対策におけるグルコサミンおよびN-アセチルグルコサミン(NAG)の有用性:文献レビュー」と題して講演。査読付き学術誌やプレプリントで公表された文献などをレビューして検証した。グルコサミンのコホート研究では、グルコサミンサプリメントの習慣的利用群は、非利用群に比べて、COVID-19による入院リスクが27%、死亡率が26%それぞれ低かった。感染リスクについては両群間に有意差はなかった。N-アセチルグルコサミンの介入試験では、COVID-19入院患者にNAGを経口投与とした結果、対照群に比べて、ICU入院期間の短縮や、死亡率の低下が認められた研究報告を紹介。作用機序として抗炎症作用や、NAGによる抗ウイルス作用が示唆されたという。同氏は、「今後、質の高い介入研究によるエビデンスの構築が求められる」と話し、「機能性食品成分の利活用は、今後、生じる新興感染症への対策としても一定の有用性が期待される」とした。

このほか、「キトサンの多孔質シート調製による血小板凝集促進作用」(甲陽ケミカル・泉良太郎氏ほか)、「ショウジョウバエを用いた機能性食品からのアルツハイマー病治療薬開発」(環境衛生薬品・津田玲生氏ほか)、「筋疲労モデルマウスの運動機能を改善する機能性食品素材」(国立長寿医療研究センター老化ストレス応答研究PT・澁谷修一氏ほか)などの研究成果が報告された。

来年は1月19日から2日間、鳥取県米子市で開催する予定

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