執筆者
コニカミノルタ㈱ 技術開発本部 南 晴貴
1.食品・飲料メーカーを巡る制約
日本の食品・飲料メーカーが直面する課題は、労働力、物流、コスト、制度対応、環境、安全保障などが同時に作用する「複合的な制約」として顕在化している。これらは相互に連鎖し、従来の「経験と勘」による個別対応だけでは最適化が難しい局面が増えている。以下に、その構造を整理する。
人手不足と技能継承の断絶は、製造・品質・開発の各工程において、人的資源と判断能力の制約となっている。2025年の「人手不足倒産」は427件と3年連続で過去最多を更新した。人が減るほど、現場は「属人的な条件出し」「品質評価のばらつき」「保全の遅れ」を抱えやすくなり、結果として再現性が落ち、対応力の低下につながる。
物流も制約として固定化しつつある。2024年4月から時間外労働上限(年960時間)が適用され、対策が不十分な場合、輸送能力が約14%不足する可能性が指摘されている。リードタイム延伸や鮮度維持リスクを前提に、在庫と生産計画を配送制約込みで再設計する必要がある。
コスト面では、原材料・包材・人件費の上昇が継続し、CPIの動向からも物価上昇の持続が示される。R&D現場では、原料置換(配合変更)を繰り返しながら同等の味・品質を維持する調整が常態化している。
制度対応も現場負荷を押し上げる。2021 年6月に「HACCPに沿った衛生管理」が完全施行され、衛生管理計画の作成と記録・保存が義務化された。多品目製造ほど記録の整合性・検索性の確保が課題となりやすい。
さらに、循環経済と安全保障の要請が開発・調達の前提を変えている。令和4年度の事業系食品ロスは236万トンで削減目標が設定され、「プラスチック資源循環促進法」(2022年4月施行)により、保存性と環境対応設計の両立が求められる。加えて、2025年4月施行の「食料供給困難事態対策法」により、兆候段階から供給確保要請や計画作成・届出の枠組みが整備され、供給途絶時に代替仕様へ切り替える準備が制度面からも求められる。
このように、日本の食品・飲料メーカーは、「人が足りない」「運べない」「コストが高騰する」「記録・監視義務が増える」「ロスを捨てられない」「原料供給が途絶する」という、日本固有かつ同時多発的な制約の中に置かれている。課題は複雑に絡み合い、個人の経験だけでは最適な判断を下すことが難しい局面が増えている。
2.AIによる「多目的最適化」の進展
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