執筆者
鶴見大学 歯学部小児歯科学講座 教授 朝田 芳信
1.ライフステージからみた口腔機能の発達
口腔機能とは食べること、話すこと、息をすること、そして表情を作ることであるが、これらの機能を担うのは歯および歯列・咬合だけではなく、口腔軟組織や口腔・咽頭の筋群も重要な役割を担っている。そして、子供はその成長の中で、硬組織や軟組織、咀嚼筋などを鍛え、摂食嚥下機能や構音機能を獲得し発達させていく。
(1)乳児期
口腔機能の獲得だけではなく、機能の切り換え(食べる、話す、呼吸は同時にはできない)を学習する大切な時期である。すなわち、「吸う」から「食べる」への移行期として、口腔の形態や機能が大きく変化する。生後5~6か月で哺乳反射や舌突出反射の消失により、食べる準備が整い始める。生後7か月頃から下顎乳中切歯が生え始め、12か月ころまでに上下の乳切歯が生え揃うと、舌の突出が抑えられ、舌と口唇の動きが分離しやすくなり、口唇を閉じての成熟嚥下や舌の上下の動きを使った押しつぶしの発達が促される。
(2)幼児期前半
最初の奥歯である第一乳臼歯が生えはじめると、前歯でのかじりとり、奥歯を使ったかみつぶしが出来るようになり、離乳も完了期を迎える。しかし、奥歯でかみつぶしができるからといって、咀嚼による食べ物の処理は上手でないため、食形態を機能の発達に合わせる必要がある。そして、第一乳臼歯の平均萌出年齢は18か月であるが、個体差も大きいことから、子供の歯の生え方を確認しながら、幼児食を進めることが大切である。
(3)幼児期後半
3歳頃には第二乳臼歯が萌出し、すべての乳歯が萌出を完了する。この時期は、咀嚼力も高まり、かみごたえのある食品を取り入れ、よくかむ習慣を身につけ、顎骨や唾液腺の発育を促すことが大切になる。必要以上に固いものを与えると顎関節の発育に悪影響を及ぼすことがあるため、「かみごたえ」と「固いもの」を混同しないように注意しなければならない。
(4)学童期
乳歯列から永久歯列への交換期となり、口腔内環境が大きく変化するため、歯の萌出や咬合状態が咀嚼・嚥下機能に影響を及ぼす時期であり、口腔機能に問題を抱えることが多くなる。また、幼児期から継続する口腔習癖(舌突出癖など)が歯列・咬合に影響し始める時期でもある。
2.学童期の口腔機能に関する調査研究
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