執筆者
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 助教 赤坂 直紀
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 准教授 渡辺 大輔
我が国には多様でユニークな伝統的発酵食品が存在し、その背景には目に見えない微生物たちの働きがある。日本酒のアルコール発酵を担う清酒酵母、「国菌」として和食の要を成す麹菌、ローカルな発酵食品の個性を形づくる乳酸菌群などが代表例であり、近代以降の微生物学・醸造学の発展とともに分離・発見されてきた。
一方で、いまだ主要な発酵微生物が同定されていない食品も存在し、同定された場合でも、その具体的な役割や発酵プロセス・産生物質の制御メカニズムには不明な点が多い。伝統的発酵食品を正しく理解し、その生産性や付加価値を高めるには、その中で生きる微生物の実像を精密に把握することが不可欠である。
近年の分子生物学およびオミクス技術の発展により、発酵を司る微生物の機能と制御メカニズムが分子レベルで解析されつつある。香りや味わい、機能性に関わる成分の生成経路に加え、微生物同士および原料成分との相互作用の理解が進み、複雑な発酵環境における微生物群集のふるまいが明らかになりつつある。
本稿では、日本の伝統的発酵食品を支える乳酸菌・酵母・麹菌に焦点を当て、現在筆者らが進めている最先端の研究事例を紹介し、それらを通じて微生物機能の開拓の現状と展望を示したい。
1.奈良漬とは発酵食品なのか?
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