執筆者
農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 新事業・国際グループ
はじめに:我が国食産業を取り巻く環境変化とフードテックの役割
近年、世界の食を巡る情勢は、地球規模の気候変動に伴う農水産物の収量不確実性の高まりや、世界的な人口増加がもたらす中長期的なタンパク質需給のひっ迫、さらには地政学的リスクに起因するサプライチェーンの脆弱性の顕在化など、大きな転換期を迎えている。国内に目を向ければ、少子高齢化の進行による労働力不足の顕在化、原材料やエネルギーコストの変動、そして食料生産に伴う環境負荷の低減への要請など、多面的な課題への対応が求められている。
これらの課題に対応し、持続可能な食料システムを構築するための有効なアプローチとして注目されているのがフードテックである。バイオテクノロジー、AI・IoT、ロボティクスなどの先端技術を食分野に融合させるこの取組は、社会課題の解決に寄与するだけでなく、新たな市場を開拓するポテンシャルを秘めている。
このような背景から、日本発のフードテックビジネスを育成し、食料・環境課題の解決と我が国経済の持続的発展に貢献するため、農林水産省は2020 年10月に産学官連携プラットフォームである「フードテック官民協議会」(以下「協議会」という。)を設立し、フードテック推進の基盤づくりを進めてきた。
こうした中、政府は2026年7月に「日本成長戦略」(以下「成長戦略」という。)を策定した。フードテックは成長戦略の17の戦略分野の一つとして位置付けられており、2040年までに我が国発のフードテックによる国内外の市場の獲得を目標とする「官民投資ロードマップ」(以下「ロードマップ」という。)を併せて策定している。これらの策定に向けては、農林水産省においても農林水産大臣を座長とするワーキンググループを設置し、フードテック分野の検討を進めてきた。
本稿では、協議会がこれまで推進してきた具体的な取組とその成果を示しつつ、成長戦略及びロードマップを踏まえた、フードテック推進のための計画の全体像や今後の展望について、農林水産省の施策展開とともに解説する。
1.フードテック官民投資ロードマップの概要
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