執筆者
Foodamental㈱ 代表取締役 吉田 惇紀
1.なぜ今、食とメンタルヘルスなのか
「なんだか気分が晴れない」「頑張りたいのに、力が入らない」。そうした感覚の背景には、ストレスや疲労のほか、人とのつながりの希薄さや孤独感もある。内閣府の調査によれば、一定以上の孤独感を示す人の割合は令和3年以降5年にわたり4割台で推移しており、一過性の傾向ではない。なかでも20代から50代では、その割合が約半数にのぼる。特殊な状況にある一部の人だけの問題ではない。筆者自身も、かつてこうした気分の落ち込みを経験した。それが本稿を書く動機のひとつでもある。当時を振り返ると、食事や生活のリズムが思っていた以上に気分と結びついていた。孤独感に限らず、慢性的なストレス、眠りの浅さ、抜けきらない疲労感、気分の切り替えがうまくいかない日――こうしたものは、特別な不調というより、言葉にされないまま抱えられている日常の感覚に近い。
食品領域でも、GABA、L-テアニン、発酵食品、腸脳相関といったテーマが取り上げられてきた。本稿で扱いたいのは、研究知見の網羅的な整理ではない。筆者はムードフードや食体験の開発を、研究としてではなく事業として社会実装しようとする立場にある。現場で商品と向き合う人間が、何を見て、何を考えているか。本稿では、そこから食とメンタルヘルスを考えたい。食品は、日常の中でどこまで人の心に寄り添うことができるのか。本稿は、この問いから始めたい。
2.食がメンタルヘルスに寄与する余地
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