執筆者
㈱シクロケムバイオ 中田 大介、石田 善行、近本 啓太、行武 詩織、寺尾 啓二
ハウス食品グループ本社㈱ 朝武 宗明
はじめに
脂肪酸とは炭化水素鎖の端にカルボン酸がついた一価の酸であり、人の生命活動に重要なエネルギー源である。炭素鎖の長さによって短鎖、中鎖、長鎖脂肪酸に分類され、鎖長がC6-C12のものが中鎖脂肪酸と呼ばれている。植物や動物に由来する油脂中に含まれる脂肪酸は、一般的にはグリセリンとエステル結合したトリグリセリドの形で存在しており、食品成分として広く利用されている。
長鎖の飽和脂肪酸の過剰摂取は血中中性脂肪を増加させ、肥満や心血管疾患の原因となるため摂取が敬遠される傾向があり、体内からの排泄を促す/体内への吸収を抑制するような食品素材が市場で話題となっている一方で、脂肪酸を含む油脂のエネルギー価は高く(9kcal/g)、活動量の多いアスリートや高齢者など積極的にエネルギーを摂取する必要のある人にとっては重要なエネルギー源となる。
脂肪酸トリグリセリドは炭素鎖の長さにより代謝経路が異なることが知られている。長鎖脂肪酸トリグリセリドでは消化管内で消化酵素(リパーゼ)によってそのエステル結合が分解され、脂肪酸もしくは脂肪酸モノグリセリドの形で吸収されたのち体内で脂肪酸トリグリセリドの形に再合成されリンパ管経由で全身に運搬されて利用・蓄積されるが、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の場合、酵素でエステル結合が分解されるところまでは長鎖脂肪酸トリグリセリドと同じであるが小腸から吸収されたのちはトリグリセリドに再合成されることなく門脈を通って直接肝臓に運ばれ、そこで分解されてケトン体となりエネルギー源として利用される。さらに、MCTの摂取が脳機能改善に与える影響も報告されており、ケトン体は脳のエネルギー源としても重要な物質である。
このように、MCTは消化吸収が速く迅速にエネルギーとして利用することができるため、消化や代謝活動の弱った高齢者にとって非常に好ましいエネルギー源と考えられる。しかし、高齢者は油っぽい食事を好まない傾向があり、また油の多い食品は満腹感を引き起こしやすいため、高齢者が摂取しやすいMCTの加工方法が課題となっていた。
1.αオリゴ糖(αシクロデキストリン)
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