執筆者
九州大学大学院農学研究院 教授 片倉 喜範
はじめに
近年、食品や食品成分は単なる栄養供給源としての役割にとどまらず、生体内の多様な細胞間コミュニケーションを介して全身の恒常性維持や老化制御に寄与することが明らかになりつつある。これまで食品の機能性は、摂取した成分が直接的に標的組織へ作用することで説明されることが多かった。しかし近年では、食品刺激に応答した腸管上皮細胞、免疫細胞、筋細胞、神経細胞などが相互に情報を伝達し、その結果として遠隔臓器の機能調節を誘導していることが示されつつある。すなわち、食品は単独成分として作用するだけでなく、生体内の情報伝達ネットワークを介して全身機能を制御している可能性が考えられている。
このような細胞間コミュニケーションにおいて、近年特に注目を集めているのがエクソソームである。エクソソームは直径30〜150 nm程度の細胞外小胞であり、miRNA、mRNA、タンパク質、脂質など多様な生理活性分子を内包しており、特に、食品成分や腸内細菌由来代謝物がエクソソームの分泌量や内容物を変化させ、その結果として脳、皮膚、筋肉など多様な臓器機能を制御する可能性が報告されている。すなわち、食品はエクソソームを介した新たな情報伝達経路を動員することで、全身的な抗老化作用を発揮している可能性が考えられる。
本総説では、食品摂取によって誘導されるエクソソームに着目し、特に腸脳相関を介したアンチエイジング作用の可能性について概説する。また、GABA、カルノシン、ウロリチンA、乳酸菌などの機能性食品成分によるエクソソーム制御機構や、その応用可能性について最新の知見を紹介し、今後のアンチエイジング食品開発の展望について紹介する。
食によるエクソソームを介した腸脳相関活性化
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