執筆者
㈱シクロケムバイオ 上梶 友記子、上野 千裕、近本 啓太、長谷川 莉沙、行武 詩織、
Buyanmandakh Buyankhishig、古根 隆広、石田 善行、中田 大介、寺尾 啓二
はじめに
シクロデキストリン(CD)はD-グルコースがα-1、4結合で環状に連なった構造をしており、デンプンに酵素を作用させることによって得られる環状オリゴ糖である。D-グルコース数が6個、7個、8個のものが主体であり、それぞれα-CD、β-CD、γ-CDと呼ばれている。CDは底の無いバケツのような形をしており、空洞の外側が親水性で内側が親油性を示し、脂溶性物質をその空洞内部に取り込む「包接」作用を有することが知られている。包接される側をゲスト分子と呼び、ゲスト分子の全体または一部を空洞内部に取り込むことによって、様々な脂溶性物質と包接体を形成することができる。
この包接作用により、ゲスト分子の安定化、粉末化、可溶化、徐放化、吸収性・バイオアベイラビリティ(利用率)の向上、味や臭いのマスキングなど、多種多様な機能性を付与することが可能となる。また、α-CDやβ-CDは消化酵素で分解されづらい性質を持ち、特にα-CDは食物繊維としても使用されている。対照的にγ-CDは消化酵素によって分解され、エネルギー源として利用できることが知られている。いずれのCDも既存添加物(製造用剤)として食品添加物公定書に記載されており、あらゆる食品に使用することができる。具体的には、わさびの揮発成分(イソチオシアネート類)を保持・安定化した調味料、お茶の苦味(カテキン類)をマスキングした飲料、大豆の特異臭をマスキングした加工品などが挙げられる。また、吸収性を高めたコエンザイムQ10(CoQ10)やR-αリポ酸などは健康食品として利用されている。
本稿では、CD包接による脂溶性物質の安定性、溶解性、吸収性・利用率の向上に関して、そのメカニズムを解説するとともに、検討事例を報告する。
1. CD 包接による安定化と吸収性・利用率の向上
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