執筆者
1)株式会社 BIOSIS Lab.、2)中部大院 応用生物学研究科、3)藤田医大 消化器内科、4)綿半トレーディング株式会社、5)藤田医大 消化器内科 医科プレ・プロバイオティクス講座
山口 響生1、2、3)、田中 守2)、三嶋 康史4)、鈴木 菜穂美4)、高橋 秀明1、3、5)、栃尾 巧1、3、5)
はじめに
近年、研究の進展により、腸内環境が代謝や免疫調整、さらには脳神経系にまで関与することが明らかとなり、「腸」は健康を目指すための研究戦略の中心的キーワードとなった。こうした背景から、日本における健康食品市場において、腸内環境改善を訴求する一般用語である「腸活」に関連した商品は、飲料、ヨーグルト、サプリメント、スナック菓子など多様な広がりをみせている。一方、「腸活」を訴求するための食品素材は増加しており、差別化が大きな課題となりつつある。以前までは、様々な機能性にて差別化が行われていたが、近年では、「プラントベース」や「サステナブル」といった視点も素材の選択における重要な要素となっている。すなわち、機能性に加え環境負荷の低さや持続可能な生産体系を有することは、企業価値やブランド価値とも密接に関係する。
上記の背景の中で、食用ウチワサボテンは注目される素材の一つである。本素材は、乾燥や高温条件下でも生育可能であり、限られた水資源下でも栽培できることから、国連食糧農業機関(FAO)が、「世界の食糧危機を救う作物」との見解を表明している。加えて、中南米では古くから野菜として利用され、現在もメキシコをはじめ30カ国以上で日常的に消費されている。近年の研究では、本素材が食物繊維やカルシウム、ポリフェノールを豊富に含み、腸内環境の改善および代謝や免疫調整などの生理作用を有する可能性が示されている。
これらの知見を踏まえると、食用ウチワサボテンは単なる「腸活」を訴求する食品素材にとどまらず、多様な機能性を有する素材として位置付けられる。また、抽出成分ではない「食品」としての形態は、日々の食事に自然に取り入れることができる。本稿では、本素材の機能性に関する科学的根拠と食品素材としての意義を整理し、「腸を起点に広がる多機能野菜」という視点から総合的に考察する。
1.世界における食用利用の実態と安全性
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