『食品と開発』誌面から

事故を未然に防ぐアレルゲン管理―的確な管理のための検査キット活用【食品と開発 5月号特集3】🔒

執筆者

食品と開発のアバター

㈱森永生科学研究所 営業部学術担当 菅村 茉莉佳


はじめに

日本の食物アレルギー患者数は、ここ数十年で増加の一途をたどっており、我々にとって身近なものとなってきている。食物アレルギーは、原因食物を食べることによって、皮膚症状をはじめとした身体の様々な箇所に症状が引き起こされる疾患であり、最悪の場合はアナフィラキシーショックにより死に至る可能性がある。2012年には、東京都調布市の小学生児童が給食のチヂミを食べてアナフィラキシーを起こし、亡くなる事故が発生している。食物アレルギーは、このように、命に係わるものであるということを心に留めていただきたい。

食物アレルギーの発症年齢は幅広く、原因となる食物は様々である。消費者庁は、食物アレルギーを引き起こす食物のうち、症例数が多く重篤な症状が起こりやすいものを「特定原材料」と定め、法令により表示を義務づけている。2024 年4月、特定原材料にくるみが追加されたことは記憶に新しい。これにより、表示義務の対象品目は、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目となった。さらに、2025年3月現在、消費者庁によって新たにカシューナッツを特定原材料として追加する方針が決定している。表示推奨品目である「特定原材料に準ずるもの」については、2024年にはマカダミアナッツが追加され、まつたけが削除された。今後は、ここにピスタチオが追加されることになっている。

このように、食物アレルギーの原因食物は近年多様化しており、表示の対象品目は、症例数と重篤度の変化に合わせて適宜追加と削除が行われている。図1は、令和3年6月~令和6年3月までの約3年間にあった食品自主回収の原因内訳である。計4,178件の回収のうち、アレルゲンの表示ミスが理由で回収となった事例は2,429件にものぼり、割合としては全体の半数以上をも占めている。

アレルギー患者にとって、アレルギー表示は食を選択する上で欠かせないものである。ごく微量のアレルゲンを口にしただけでも症状が現れてしまうような人もいるため、表示の誤りはあってはならない。実際に、表示の間違った食品を食べたアレルギー患者が発症してしまい、食品が回収となる事例は少なくない。また、食品回収は、消費者や取引先の信用を失いかねないものであり、企業イメージを下げてしまう。食物アレルギー患者のQOLのためにも、自社のお客様との関係性のためにも、食品企業は、アレルゲンを抜けなく管理することが強く求められる。

では、どうすれば事故を未然に防ぐことができるのか、本稿では製造現場でのアレルゲン管理における検査キットの活用について解説する。

🔒この記事は雑誌に収録されています。

続きは『食品と開発』5月号にてご購読いただけます。

食品と開発2025年5月号

【2025年5月号】特集/アレルギーコントロールと検査技術

『食品と開発』誌面から

米国FDA、ガルディエリアブルーなど天然系着色料3品を承認

豆乳生産量が好調に拡大―2025年1-3月期は前年同期比104.9%

関連記事

  1. 食品と開発2025年9月号特集I-3 果物の安定供給へ向けた輸出入商社の取り組み【食品と開発 9月号特…
  2. 細胞性食品の規制と今後1 細胞性食品(いわゆる「培養肉」)の「実装」をとりまく現状と課題【…
  3. 食品と開発 4月号特集2 美味しさの見える化で何ができるか?【食品と開発 4月号特集2】&…
  4. 【2025年11月号】特集/可溶化・安定化・吸収性向上素材と技術 食品素材の吸収性及び生体利用率を向上させる製剤技術【食品と開発 …
  5. 202506feature (2) 香料を活用した原料代替提案とその効果-香りのチカラで支える、食の…
  6. 食品と開発 5月号特集1 食物アレルゲン低減を目指した技術-アレルギー症状を引き起こさない…
  7. 【2025年11月号】特集/可溶化・安定化・吸収性向上素材と技術 難吸収性成分の「持続的な吸収」をサポートするクリルオイルの可能性…
  8. 今号注目の食品機能性特許 今号注目の食品機能性特許 吸収性コントロールに関する用途発明【食…

お問い合わせ

毎月1日発行
  年間購読料 33,000円(税込)
      1冊 3,300円(税込)

海外展示会のツアー開催

「食品と開発」では海外の食品展示会に合わせたツアーを開催しております。渡航や展示会入場に関する手続きを省け、ツアーならではのセミナーなどの企画もございます。
資料請求は【こちら】

■2025年予定
・12月1日(月)~8日(月)
Fi Europe/ルサッフル社訪問/欧州市場調査(パリ、ブリュッセル、ロンドン)

■2026年予定
・3月3~6日 米国
Natural Products Expo West

食品開発展2026

PAGE TOP