執筆者
フォンテラジャパン㈱ 深江 拓朗、三浦 真衣
はじめに:GLP-1普及と高たんぱく食品市場
近年、スポーツニュートリション分野を中心に、乳たんぱく市場は世界的な成長を遂げてきた。こうした動きをさらに加速させているのが、米国におけるGLP-1受容体作動薬の普及を契機としたたんぱく質需要の更なる拡大である。人口当たりの肥満率が高いことが課題となっている米国では、GLP-1薬の使用者が米国人の12%に達するとの試算もある。従来は限られた層に留まっていた高たんぱくニーズが、GLP-1 薬の広がりによって一般消費者層へと一気に浸透したことが、その背景にあると考えられている。
市場の急拡大と並行して、十分なたんぱく質の摂取の重要性が消費者の間でも広く認知されるようになった。この流れは消費トレンドにも明確に反映されており、2024年以降、たんぱく強化・高配合を訴求する新製品の発売数は顕著に増加している。
米国における乳たんぱく消費の急増が、ここ数年間の世界的な供給不足や価格高騰の一因となっていることは間違いない。スポーツニュートリションやウェイトマネジメント分野を中心としたたんぱく関連トレンドは、その多くが米国市場を起点として形成・拡大してきたと言える。そのため今後の市場構造の変化を的確に見通すためには、米国市場の動向を継続的かつ詳細に把握することが重要となる。
最新動向のひとつとして、2026年に米国は食事摂取ガイドライン(DGA:Dietary Guidelines forAmericans)を更新し、行動指針として、体重1kgあたり1.2~1.6gのたんぱく質摂取を推奨した。同時に、加工度の低いホールフードを重視し、超加工食品や精製度の高い糖質の摂取削減を打ち出したほか、赤肉・全乳やバターの摂取を許容するなど、長年の穀物中心の栄養ピラミッドから大きく転換した。
ガイドライン策定にあたり専門家で構成されたDGA諮問委員会は、特に女性を中心に若年者や高齢者ではたんぱく質摂取が不足していることを課題として指摘しており、たんぱく質摂取の推奨を強化した背景のひとつと考えられる。過度な食事制限がたんぱく質不足につながる恐れがあり、GLP-1薬の使用者においても食欲減退によりたんぱく質不足に陥りやすいため積極的な摂取が推奨されてきた。
GLP-1薬の広がりとともにたんぱく質摂取の重要性が認識される中、今回の米国DGA 改訂がたんぱく質摂取を明確に推奨したことで、高たんぱく食品の需要がさらに高まっている。加えて、超加工食品の削減が明確に推奨されたことで、植物たんぱくなどを用いた加工度の高い代替食品からの消費者離れが加速し、たんぱく質源として乳製品需要がさらに後押しされる可能性がある。
1.ウェイトマネジメントと乳たんぱく―エビデンス整理
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続きは『食品と開発』2026年7月号にてご購読いただけます。













