執筆者
SOCSマネジメントシステムズ㈱ 代表取締役 田中 晃
1.食品衛生における「環境」の役割
『食の安全を守るために「清潔」が重要である』―「食」に関わる人であれば、この考えに異論を唱える人はいないであろう。しかし、では「清潔」とは何か、と問われるとなかなか明確に定義することは難しい。
「清潔」を国語辞典で調べると『汚れのないこと。きれいなこと。また、そのさま』と定義されているが、「食」の安全においては、「清潔」とはどのような“こと”(もしくは“状態”)であろうか。
食品衛生7Sでは、清潔とは「微生物レベルの清潔さであり、病原菌などのハザード(危害要因)が、一定程度のレベル以下であること」と定義されているが、この定義をもとに考えると、「清潔」とは「ハザード」をどのように定義するかに関わっていると言える。視点を変えると、「清潔」とは、食品製造環境に関連するハザードが、問題を発生させない適切なレベルでコントロールされている状態と考えることができる。
ハザードは、食品衛生の分野では『健康への悪影響を引き起こす可能性のある食品中に存在する生物的・化学的または物理的要因』と定義されるが、弊社では、この定義では、「食」の安全にとっては十分ではないと考えている。何故なら、ハザードを「リスクが生ずる原因となるもの」もしくは「危険を発生させる根源となるもの、もしくは発生の可能性を高める状況」と考えると、ハザードは「食品中に存在する」生物的・化学的また物理的要因だけでなく、そうした危害要因を保持・残存、または増大させる可能性や、もしくは危害要因が食品と接する機会を提供する「環境」そのものも重大なハザードとして予防的管理の対象にする必要があると考えるからである。
「食」の安全に関する議論では、原材料の管理や製造工程の管理が中心になることが多く、食品を製造する「環境」に関してはあまり注目されてこなかった。食品衛生に対する製造環境の重要性に関しては、「重大な食品事故は、しばしばCCP管理(加熱工程など)の逸脱以外が原因で発生しており、その大きな原因は前提条件プログラムの不備に起因している。
リステリア・モノサイトゲネスなどによる製造環境の汚染が重大な危害要因として認識されている現在、工場における食品製造環境が病原菌や腐敗菌の重大な汚染源となるリスク」であると言える。また、製造環境と食品の汚染の関係に関しては、「環境陽性=製品汚染の可能性70%(=製造環境に微生物汚染がある場合、70%の確率で食品も汚染される)」との見解もあり、食品の安全と製造環境の関係の重要性が認識されるようになってきた。
2.「衛生作業」は生産の第一工程
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