『食品と開発』誌面から

「人」の行動を中心に異物混入対策を考える(2)【ヒトと組織のマネジメントから考える食品工場の衛生管理⑤】🔒

執筆者

食品と開発のアバター

SOCSマネジメントシステムズ㈱ 代表取締役 田中 晃


1.人を基軸にした異物混入対策

前回は、「異物」とは何か、また、異物対策の中心的な課題は人の「行動」であることを検討したが、今回は異物対策を進める上で重要な「異物混入防止3原則」①落とさない・作らない②落ちてしまったものは取り除く③工場内に持ち込まないの「3原則」をもとに具体的な対策を考える。

1)「落とさない・作らない」ための対策

異物とは「そこに存在してはいけないもの」との定義に従うなら、「落とさない・作らない」原則は、異物の発生源対策として重要である。

毛髪混入を例として考えると、通常の健康人で、1 年間に2万本以上の毛髪が抜け替わる(「=落ちる」)と言われている。これは1日当たりに換算すると、毎日50~60本の毛髪が誰でも自然と抜け替わっていることになり、工場に出入りする人(従業員、配送・納入などの関係者など)全員に、これだけの本数の毛髪(総人数×50本)を落下させる可能性があることを意味している。誰でも毎日、自然に抜ける毛髪が落下して「異物」とならないためには、個々の従業員が洗髪やブラッシングを自宅で確実に実行することが、最も重要で、効果的な毛髪混入の発生源対策である。

「落とさない・作らない」対策として、

整理・整頓を徹底し不要物を工場内にとどめない

ユニフォームを整備し管理方法と着用基準を徹底する

入浴、洗髪により抜けた毛髪・体毛を除去する

原材料、仕掛品、製品を異物が混入可能な状態で放置しない

工場内では素足や短い(くるぶしより下)ソックスの着用を禁止する

製造工程を改善し、うつむき作業や作業者がライン上に被さるような動作をなくす

などがあげられる。

2)「落ちてしまったものは取り除く」ための対策

毛髪やホコリなどの異物は、比較的軽量で、作業者の動作や、ドアの開閉などの僅かな風の動きでも飛散する可能性がある。したがって、異物を拡散させないためには、落ちたり抜けたりした異物は放置せず、可能な限り速やかに取り除くことが必要である。

落ちてしまったものを確実に発見し、速やかに除去するためには、工場内の整理整頓を徹底し、掃除しやすい条件を日頃から整えること(「7S」の徹底)が重要である。掃除を行う際には、「見える場所」「掃除しやすい場所」だけでなく、作業台や生産ラインの下部・周辺、階段、更衣室などの「見えにくい場所」「掃除しにくい場所」の計画的な掃除の実施が重要である。

床に落下する毛髪の本数は、その場所の人口密度や作業の動きと関連している。したがって、作業工程上で人が集まりやすい場所や、複数の作業動線が交差する場所は重要管理ポイントとなる。

また、異物が落ちやすい場所(エアーシャワー室の内部や出口側の床面等)や、異物が堆積しやすい場所(室内の隅や掃除用具等)などで、管理上の盲点となりやすい場所・物も重点管理ポイントに加えておくことが必要である。

「落ちてしまったものは取り除く」対策として、

原材料・仕掛品・製品に落下、混入した異物を目視確認し排除する

金属探知機等の検査機器を設置する

清掃を徹底し毛髪・ゴミ・ほこりなどを場内にとどめない。特に通路・廊下・階段の清掃を徹底する

更衣室・休憩室の清掃を徹底させる(特に個人ロッカー、休憩用ソファー、畳・カーペットなど)

ユニフォームの洗濯・管理基準と交換頻度を決める

工場内で使用するスリッパ・作業靴類の内部、および表・裏面の洗浄・清拭を徹底させる

作業中に時間を決めユニフォームのチェックと粘着ローラー掛けを実施する

などがあげられる。

3)「工場内に持ち込まない」ための対策

工場内で発生する異物を除くと、異物は人・物・空気のいずれかの移動に伴い場内に侵入する(衛生獣害虫に由来するものは除く)。この事実を考えると、場内に異物を入れないための“水際対策”が重要課題であるが、合わせて、気付かずに持ち込まれている異物に対する対策も重要である。

毛髪の例で考えると、ユニフォームに着替える前に、インナーウェア表面や衣類の内側に平均2~3本の毛髪が付着している場合が多い。これらが場内に持ち込まれる可能性を減少させるために、着替え前にインナーウェア表面への粘着シート掛けを徹底させると効果的である。

また、外部業者(清掃や設備点検・工事の作業者、納入・配送のドライバーなど)の管理は盲点になるので注意が必要である。残念ながら、外部業者には「作業者自体が最大の危害要因」であることの認識が欠落してい82 食品と開発 Vol. 61 No. 9る例が多く、食品製造施設に入場するための基本的ルールや行動規範など、最低限の知識や物的準備を有していないことが多いので、自社のスタッフと同様にルールを作成し、管理を徹底することが必要である。

「工場内に持ち込まない」対策として、

エアーシャワーを設置し作業者に付着した毛髪・ゴミなどを除去する

入場前に粘着ローラーで作業者に付着した毛髪・ゴミなどを除去する

ユニフォームの着替えルールを見直す(着替え前のブラッシング、更衣室でのインナーウェアへの粘着ローラー掛け、ユニフォームを床に直接置かないなど)

ユニフォーム・帽子の素材と構造を見直し毛髪・ゴミ類の付着を減らす

エアーシャワーの管理基準を見直す(床面・壁面・フィルターの清掃、設備点検の頻度など)

場内への私物持ち込み規定を見直し、許可された場合を除く私物の場内持ち込みを禁止する

外部業者(清掃、納品・配送など)の入場ルールを作成し、作業者の衛生教育を徹底させる

日常の洗浄作業や、外部業者の資機材・物品の場内搬入ルールを決め、搬入時と搬出時の員数と状況の記録を残す

などがあげられる。

🔒この記事は雑誌に収録されています。

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